星の砂-14
「うおっどうしたエクトル。やんちゃな少年のように土まみれじゃねぇか…えっ? ゼナイド、お前はどうしてさらに剣を片手に…もうリルレを発つんじゃないんだろ?」
青い太陽が照らし続ける下、ゼナイドとエクトルは必死にスナクイリスを探していたのだが、全く持って見つからなかった。
ゼナイドはいつも通りであるが、エクトルはヘロヘロである。ローハはゼナイドにこっそり「今日はあいつ、先に帰らせるよ」と言った。
開店し、いつもの顔ぶれが騒がしにやって来て、何やら疲れた顔をしているエクトルに声をかけながら、愉快に飲んだり食ったりをしている時だった。
「御免くださいますので?」
聞き慣れない声の主が、店に入ってきた。酒場に似合わない子供がいた。
「ご安心ください。キノは立派な大人ですので。お酒、ぐびぐび飲めますので」
ずかずかと大人を語る子供姿の謎の客が入ってくる。店内の皆が、食う手飲む手を止めてその客を見ていた。
「ふふ…こんながきんちょのような姿では、信用されないのも無理はありませんので…御説明いたします」
誰も聞いていない答えを喋り続ける褐色の肌の色をした客が一礼した。
「キノはキノ・ピッツ! 大陸魔法師団志願のため、故郷ガーディンドから遥々やって参りました! 偉大なる父は優秀なゲノス族の元魔法師団員! つまりッ! キノが優秀な魔法師団員になることは約束されていますので!――あっ違う――偉大なる父は優秀なゲノス族! つまりッ! キノはゲノスの血をひくアイテルマノですので!」
誰も何も言わない。静寂という時が刺さる。
「アレ、えっと…」
キノと名乗った少年――ではない、男性は頭をとんとん小さな指で小突きながら辺りを見回す。「ああ…久々に人と話す機会だったからつい…練習してきた文言を口走ってしまいましたので…」
「とりあえず、飲んでくかい? 旅人サンだろ。歓迎するよ」ローハの言葉を聞いて、客達もおうよおうよとどよめきだす。
「え、ええ! 勿論いただきますので! なるべく弱いやつでお願いしますので!――じゃなくて! あ、いや! そうなんですけれども!」
キノは小さな頭をきょろきょろ回して、店内の人の顔を一通り確認している様子を見せる。「宿屋のトウナという女性から紹介されましたので。ええと、エクトルさんと」
「俺に? トウナから?」厨房からエクトルがやって来た。エクトルがキノの姿を確認する。「エクトルさんですので?」
「――あんた、ゲノス族って言ってたよな」
「正確にはハーフになりますので、生粋ではありませんが」
「ゲノスの人が来るたぁ、珍しいな、いつぶりだろう」ローハがぼやく。一方エクトルは、嬉しそうな表情を浮かべた。「そうか、トウナ…!」
エクトルはゼナイドに手招きをする。実に嬉しそうな表情を見せるエクトルを不思議に思いながら、ゼナイドはエクトルの元に向かった。
「ゲノス族は、アイテルマノで言う青系統の種族でな」
ゼナイドは、以前エクトルとローハから教えてもらったアイテルマノについての内容を思い出すと、何かに気付いた様子を見せた。
「ゲノスは、土魔法が得意な種族」
「ええ! そうですので」
いつの間にかふたりの足元にいたキノに驚かされる。「さらに」
キノはふたりの手へ自分の手を持っていき、その小さい手をふたりに握手のような形で繋いだ。
「キノは地面の魔法について研究する者ですので! 地面にはちょっぴり詳しいので!」
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