星の砂-13
青い太陽が昇って、トウナが起きる頃にはゼナイドとエクトルは出かける支度を終えていた。「あれ、ふたりともどうしたの?」
トウナに事情を説明すると、特にエクトルに向けてかなり不安そうな顔を見せた。しかしそれはすぐに消えて、「私にもあれば言ってね、できること」と見送ってくれた。
テーヌ通りにある薬屋に向かい、太陽病に必要な星の砂の量を聞きに行く。店主の老女は、街の者から太陽病患者が出ていることに驚いていた。
「あたしも直接見たことも作ったこともないんだがね。いやはや作りそうなことになるとは」
店主は店の奥から書物を持ってくる。木製の椅子を軋ませ、モノクルをいじりながらページをめくっていく。
「安心しなさい。この書物はレッハルトの優秀な薬屋が書いた調合書さ。薬屋を開くのに必ず必要なものでね…ええと、太陽病に効く薬は…あったあった。ああ…本当だ。星の砂以外は手元にあるよ」
「星の砂はどれくらい必要なんだ?」
「フム…0.5g…少なくとも、用意する材料の中では一番少ないね」
それからゼナイドとエクトルはリルレの街を出て、近くの森へ向かう。スナクイリスの住処は木の上だ。食事中を狙うのもいいが、住処に餌をためてるんじゃないか。捕まえる作戦を話し合っている時にたどり着いた結論だ。
この日はエクトルは地面を、ゼナイドは木の上を探すことにした。
「旅の途中で何度か見かけたことはある。地域によって毛色が違うということはなかったから、多分、見たらわかる」
「そうだ、ディリガの部屋に図鑑とかないかな。昔から色々調べるの好きとか言ってたし、もしかしたらあるかも」
「危険を感じたら君は逃げるんだよ」
「おう…って、護ってもらうことが前提なのが情けねぇ…言っとくけど、一応自分の身は自分で護れる手段はあるぞ」
「そうか。ではエクトルも、やはり魔法を使えるのか」
「…さあ、どうだろうな」
エクトルは、故郷にいることが嫌だった。その原因の一つが魔法だった。
「とにかく、自分の身は自分で護る」
「頼もしいな」
「出来る限り、な」
「心配になってきた」
何かがあった時、例えば魔獣に出くわした時の対策はしている。ゼナイドは動きやすい、リルレに来た時に出会った格好をしているし、エクトルも密かに自分はまだ魔法が使えることを確認した。
青い太陽が沈めばリルレに戻り、ローハの酒場での仕事が待っている。ふたりとも、長期間このような探索を続けるわけには行かないと、口にせずとも焦りも感じていた。
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