星の砂-12

「助からないことはないんだな」



 ゼナイドが言う。蹲るリヤを慰めながら、ローハは頷いた。



「長期化した中でどうしたもんかと慌てふためいている間にケロッと治ったって事例もあるにはあるらしい。とはいえ、そんなものに期待をかけるわけにはいかねぇ。そこで太陽病特化の薬がある」



 その薬は、あるひとつの材料を除けば至って普通の薬だった。その材料さえあれば、大陸での需要に対する供給が追いつき、田舎であるリルレにも回ってくるのだろう。



「それさえあればいいんだな。それは一体?」



 ローハは渋い表情をして続ける。「”星の砂”」



 ゼナイドがああ、と頷いた。「”スナクイリス”がよく頬張る中にある」


「そうなのか?」リヤが泣き腫らした顔をあげる。



「時々スナクイリスを捕まえて、頬張った砂を吐き出させて探している連中を見たことがある。売ると高いから、と言っていたのはそれだからか」

「ゼナイドは、そのスナクイリスを捕まえることはできるのか?」



 エクトルの問いを受けて、ゼナイドは時々見かけたスナクイリスを捕まえようとしていた連中の様子を思い出す。


 ―――スナクイリスはすばしっこくてなぁ。普通に追いかけたんじゃあ捕まらん。砂をもぐもぐしてる時が、狙い所よォ。



「頑張る」

「頑張るのか…」



 リヤがゼナイドの手を掴む。



「薬はリルレには売ってねぇ。そもそも数がないんだからな…。けど、砂さえあれば、薬師に頼んで作ってもらえる…! 頼む…!」

「勿論。頼まれなくても採りに行くつもりだった」



 リヤの顔が希望に満ちてくる。「ありがとう…っ」


「これも私なりの恩返しとさせてほしい」



 それからディリガの家に帰る。今日は珍しく、トウナは先に寝ていた。


 ゼナイドは静かにトウナの部屋に入り、剣を持ってきた。「いやいやいやいや待て待て待て待て早いって」


「早い方がいいだろう」

「いや、あのな」



 エクトルがなんとかしようと食い止める。とりあえず青い太陽が昇ってから、薬屋にどの程度必要かを確認して行くことにした。「目標は明確に見えないとだからな」「確かに…」

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