星の砂-11
ゼナイドが働くようになり数日して、ローハの腰が治った。それからは3人で店を回す日々を送っていた。
ゼナイドの働きぶりにはローハも目を見張る部分があり、客もエクトル達もゼナイドと過ごす酒場での時間に慣れてきていた。
ある日の営業終わり、3人で店を片付けていた時にリヤがやってきた。その沈痛な面持ちに、子供の具合を悟る。
「”太陽病”だった」
エクトルとローハは納得した様子でいた。一方ゼナイドはわからない様子を見せている。「助からないのか?」
「いや、なんというか」ローハが唸る。
「ゼナイドは、”魔法”は使えないのか?」
エクトルの問いに、ゼナイドは頷く。「父もヒュマノだから」
銀の民もヒュマノである。彼らは魔法が使えない。世界の人類で2割がヒュマノだという。
反対に、使える者達はアイテルマノや、四種族と呼ばれる。彼らは、火・水・土・風いずれかの魔法が使える者達だ。
アイテルマノは、ヒュマノと四種族の混血種なので、魔法が使えない者も一定数いる。ヒュマノは、本当に魔法が使えることはない。理由は不明であるが、”魔素”を持たないから、と言われている。
「魔法についてはあまり知らないんだ。4つある、くらいしか」
「ああ。じゃあそうだな…」
それからゼナイドへ、エクトルとローハは魔法についてを説明した。
アイテルマノは2種類に分けることなくできる。青系統の水・土。赤系統の火・風。
「青と赤…太陽の色と関係があるのか?」
「そう。太陽病と呼ばれる所以だ」
一般的には、青系統の魔法が使える場合には青色の血が、赤系統であれば赤色の血が流れている。
太陽病というのは、血の色に応じた太陽が昇っている時に、高熱を出す病気だという。
すぐに治ることもあれば長期化することもある。長期化すれば、常に体調を崩しやすくなり、場合によっては死に至る。
幼い子供、特に幼少期までに発症する例が多い。まだ魔法についての研究が進んでいないため、厳密性には欠けるが、『太陽の光と応じる魔素が暴走しているのではないか』という仮説が一般的である。
「名のある魔法師は、重い太陽病を乗り越えたって話もある」
「…イーリアの父は魔法師団にいたことがあって。イーリアも使えるもんだから、もしかしたらいい魔法師に…なんて言ってたんだ」
リヤが目元を抑えてうずくまる。「あんなに苦しそうなら…使えなくたっていいって思っちまう…! 魔法が使えなくても問題はない!」
生活には問題がない。だが使える方がやはり何かと便利であったり、場合によっては優遇されることは間違いなかった。
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