星の砂-7

 ディリガに会うまで、ゼナイドはリルレの街にとどまることにした。


 リルレに来たのがついさっきで、受付が閉まっていたために宿屋を借りることができず、今日は野宿でなんとかする、と言い出す。


 エクトルがなんとか家へ連れて行くことを説得し、野宿を回避させた。今ほどトウナが起きてくれていることを祈るばかりはもうないだろう。


 長い星の時は、短い星の時とは違った星空模様が広がる。星明かりの下、ゼナイドとエクトルはトウナの待つ家へ向かっていた。



「ディリガがいない時は、君は一人暮らしなのか」

「エクトルな。俺。えーっと、ディリガの娘がいる。トウナってやつで」

「そうか。私が行って大丈夫か?」

「俺が説得するから大丈夫。悪いやつじゃないよ」



 家について、ドアを開けると「おかえり」と真っ先に声が聞こえた。やはり起きていたようだった。



「トウナ、ひとり泊めてもいいか? 旅人さんなんだ」



 エクトルに誘導されて、ゼナイドが入口の前に立つ。「ゼナイド…といいます。無理を言って申し訳ないが、青が登る時までで…」



「旅人さんお持ち帰り…!」

「言い方なぁ…」

「冗談だよ」



 トウナは嫌がる素振り一つ見せず、ゼナイドを中へ招き入れた。「ありがとう。助かりました」



「ゼナイドって言うのね。綺麗。旅で疲れてるだろうし、もう寝ようか。明日、シャワー浴びよう! 髪、とても綺麗だから」



 トウナはゼナイドを気に入ったようで、すぐいろいろ構い出していた。妹ができたような気分なのだろうか。


 ゼナイドは酒が飲めないと言っていたが、それは好みではなく、年齢的な原因だった。


 お酒は20歳になってから、というが旅人はほとんど守るイメージはない。ゼナイドはかなり真面目なのだろう。なんとなく、エクトルやトウナよりは歳が下だと予想していた。「歳は18、です」「わぁ。私、20だよ」


 ゼナイドはトウナの部屋ですぐに眠りにつく。やはり疲れが溜まっていたようだ。


 ゼナイドの荷物は相当少ないようで、手に持つ随分頑丈そうな鞘に収まる細身の剣と、空の袋、路銀の入った袋だけだった。



「銀髪ってことは…銀の民?」

「母親だけらしい。ハーフって感じか」

「ふーん。…エクトル、復讐、じゃないよね?」

「は?」



 エクトルの故郷は、銀色の龍が起こしたとされる大嵐で、山の土砂崩れが引き起こされ、谷にあったために消え去った。


 銀色の龍は銀の民と関係している、というのが一般的な認識で、基本的には謎に包まれた存在である。



「アホか。…さっき、店の片付け手伝わせちゃってさ。野宿とか言うし」

「ああ。ローハさん、腰痛めちゃったんだっけ。明日腰痛の薬、持っていこうかな」

「そうしてあげて」

「リヤさんは?」

「リヤんとこはこないだ子供が産まれたから。しかも今日、熱出してたし」

「大変だなあ」



 それからエクトルとトウナも眠りについた。

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