銀の剣士

星の砂-6

　赤い太陽が落ちかける頃には、客の騒ぎも落ち着いて、エクトルは片付けに専念できた。ゼナイドが皿洗いをしてくれるのもありがたかった。

「ディリガを探してるんだっけ？」

「ああ。君はディリガと暮らしている、らしいが」

「正確には、ディリガの家に置いてもらってるだけなんだけど」

　既に洗い場にあった皿やコップを丁寧に洗い終えると、各席の空いた皿を回収し始めた。行動に迷いがない。これまでの旅の中でも似たようなことをしてきたのだろう。

　それから赤い太陽が落ちきる。ゼナイド以外の酔いどれ客はみんな帰っていった。ゼナイドは手際よく拭いた皿を食器棚に並べていた。

「なんでディリガを？」

「ディリガは、この地の大陸に伝わる文化を研究している、と聞いた」

「そうだな。今はどっか行ってる」

「今はいないのか」

「そうなる。行き先を教えてもらってないから、いつ帰ってくるかもわかんねぇし…」

　明らかにがっかりした雰囲気が漂う。「い、急ぎか？」

「いや。急ぎではないが…早く知れるものなら知りたいんだ」

「何を？」

「銀の民」

　大陸に伝わる、太古からこの地に暮らす者達。銀色の髪、銀色の瞳、銀色の肌、銀色の血を持つ、とどこまでが嘘で本当かわからない。現在もどこかに生きているのか、滅んでいるのか。謎に包まれた存在。

「アンタ、もしかして」

「いや、私は生粋の銀の民ではない。父親が違うから」

「じゃあ、母親は」

「恐らく。確信がないのは小さい頃に別れたきりだから、正確に覚えがない」

「別れたのは、銀の幻獣になったから？」

　ゼナイドの動きが止まった。エクトルは少しして「悪い気にするな」と早口でなかったことにしようとした。

「―――銀の民は、銀の幻獣になるのだろうか」

　残りの皿を拭き始めて、ゼナイドは続ける。

「私はそれすらも知らない」