第25話 番外編
私達は両思いだった。
でも決して他にはバレてはいけない、禁断の恋だった。
この恋の行く先は分からない。
だけどこの幸せがずっと、できるだけ長く続いて欲しいと願った。
この頃からだ。
私は人の心の中が読めるようになった。
何を思っているのか。
口から出てくる言葉と、全く違う言葉が一緒に頭の中に入ってくることがあった。
次第に人を信用出来なくなった。
元々人付き合いは苦手だったけど、誰かといることを避けるようになった。
なんで人の心の中が読めるようになったかは分からない。
突然だった。
知らなくても良い部分までその人を知ってしまうことは苦しかった。
それは姉に対しても適用された。
陽のことが好き、好き…
私への愛で溢れていた。
それが行為からも伝わってくるし、嬉しかった。
「好き…」
いつもみたいに私に反応する。
今日も姉が喜んでいてくれる。
嬉しい。
"陽、ごめんね…"
「好き、もっと…」
唇を塞がれ、強請られる。
いつものことなのに。
その間にふと一瞬聞こえた声は、姉の謝罪だった。
何に対してなの?
なんで私が謝られるの?
お姉ちゃん何も悪くないのに。
目の前の姉は私を求める。
だけど、姉の辛そうな声が聞こえてくる。
……なんで、なんで
私は分からなかった。
姉が私とこうしている間に、現実に苦しんでいたことを。
中学の卒業式が終わり、春休みになった。
姉の苦しみが分からないまま、それでも私を求めてくれた姉に応えるように、毎晩私達は行為に及んでいた。
「陽…」
「何?お姉ちゃん」
私はいつものように姉のパジャマのボタンに手をかける。
だけど姉が私の手を掴み、それを阻む。
少し様子が違っていた。
「…卒業祝い。」
「えっ」
私の手を下ろし、姉は私の鎖骨に自分の手を添えた。
優しく、最表面だけに触れるように撫でる。
私の体がビクッと跳ねる。
ただ触れられただけなのに、少し呼吸が荒くなる。
その手がゆっくりとパジャマのボタンにふれた。
私は思わず姉の顔を見る。
目が合う。
目を背けられると、1つずつボタンが外される。
その様子を私は見ていることしか出来ない。
その手に釘付けになる。
「そんなに見ないでよ。緊張する」
「自分からやってるんじゃん」
「…だって、いつもしてもらってばっかりだから」
ボタンを外すその手つきは不慣れで、少し震えている。
"ごめんね。好きだよ。陽"
また謝って、そして愛を伝える。
姉の行為の真相は謎だ。
なぜ謝るのか。
謝らなければならないのは、なぜなのか。
ゆっくりとした優しく、壊れそうなものに触れそうな手つきは、私を好きでいてくれているからなのか。
それとも謝罪の意を込めてなのか。
私は姉に身を委ねた。
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