第17話
「死ぬ…?」
梅村さんの言葉が妙に引っかかった。
引っかからない方がおかしいと思う。
「私、人の心が読めるの。」
「え、すごいね」
「すごくなんか無い。…こんな能力はいらなかった。」
梅村さんはタバコをふかしながら、見た目と行動に似つかない口調で語る。
「…村主ひなのは、とても分かりやすかった。あなたを見る目が最初から違っていたから。彼女はいちばん肝心なところを言わないから、鈍感な黒森さんは気づかなかったのでしょう。」
今日学校でも鈍い、鈍感と言われたことを思い出す。
たしかに今の今まで気づいていなかった。
「白木詩音。…あなたに何か執着する過去を持っている気がする。」
「過去…?」
詩音と出会ったのは高校に入る直前。
私が死のうとしていた時だ。
過去に執着といっても、詩音の家に行ったり、2人で出かけた思い出はあるけどそれ以外は至って普通の学生生活だ。
執着する、何かか私には思いつかない。
「私にもそれは分からない。…でも運命があなた達2人を結びつけたことは確か。」
結びつけた。
運命。
「そして、あなた。黒森百合。」
電子タバコを吸うのを梅村さんはやめて、私をじっと見る。
「あなたはもう少し、自分を出しても良い。」
自分の気持ちを押し殺して生きてきた。
見透かされていた。
梅村さんは私に何かを諭すように、言い聞かせるように、今までよりも丁寧に言葉を紡ぐ。
「恐れることなんてない。ありのままに生きていい。…何科に囚われる必要なんてない。……あなたを受け入れてくれる人がいるはずよ。」
無表情だった梅村さんが少し口角を上げて、優しい表情を浮かべる。
その表情は少しだけ寂しそうな感じもした。
私は梅村さんに問いかける。
「梅村さんには、自分を受け入れてくれる人は、いる…?」
私は自分をさらけ出すのが怖い。
もう分かってる。
自分の気持ちなんて。
自分に嘘をついていたって、どうしようもないくらい分かっちゃうから。
どんな誤魔化しをきかせたって、無駄なことくらい、もう分かってるから。
梅村さんの寂しそうな顔。
たった一瞬だったけど、助けを求めているようにも見えてしまった。
「いた。」
過去形。
いる、じゃない。
「私のことはどうでも良い。」
「良くなんか……」
私がその後の言葉を続けようとした時、口元に梅村さんの人差し指が押し付けられた。
私は反射的に後ろに仰け反る。
「黒森さん。」
「何?」
人差し指を離すと、梅村さんは無表情のまま口を開く。
「私、村主さんが好きなの」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます