第2話
「…っ……起き…た……」
体に何かが覆い被さる。
人だ。
でも、誰…ここは……どこ?
私の目の前には真っ白な天井。
視界の隅に白っぽい髪の毛が少し見える。
「…良かった。」
寝ている私を誰かが抱きしめるような形になっていることに気づく。
私は我に返り、その誰かを引き離そうと肩を押すが、
「った!!!」
左の手首が痛い。
今まで感じたことがないくらい痛い。
起き上がった、白い髪の女の子と目が合った。
女の子にはどれだけ泣いていたんだろうと思うくらいの涙の跡が頬にあった。
「あなた、死ぬところだったんですよ!!」
私の肩に指先がくい込みそうなくらい力を入れて、肩を乱雑に揺らす。
「い、たい」
「ごめんなさいっ!…あ、、す、すみません!」
なんで2回謝った…?
鬱陶しいくらいの太陽の光が差し込んでこない。
つまりもう夜だ。
そして段々と自分が何をしていたかを思い出し始めた。
それにしても…
「あなたは誰?」
あの家に来る知り合いなんてもういないはずなのに。
それにこの子は見たことがない。
窃盗?何かの詐欺師?
この子がなぜあの場にいたのか、不可解だ。
「窓から…見えて……死んじゃうって、咄嗟に…」
そうか。
見ようとすれば窓から見えるのか。
カーテンも適当に閉めたから、隙間から見えてしまったのだろう。
私が…死のうとしているところ。
死ねなかった。
「助けてくれてありがとう。」
死ねなかった……
「私、死にたかったの。…正直、お節介だから」
この子のおかげで命拾いしたのに、こんな最低な言葉を吐き出すことが出来る、クソ人間なんだよ私は。
彼女と目を合わせないように窓の外へと顔を向ける、
「んっ!!!」
何が起こっている…
視界が暗い。
暗くてぼやけて…
私は目を閉じた。
少しして視界が明るくなる。
それはあまりにも突然の事で、初めてだった。
「私も、死にたい」
その瞳に吸い込まれてしまいそうだ。
出会ったばかり、それなのにどうしてだろう。
私たちはお互い、何か寂しさを埋めるように唇を重ねあった。
こんなことをしていたら、きっとあなたを不幸にしてしまう。
そんなことよりも、私を求めるように何度も何度もキスをするあなたを手放したくなかった。
「っは…ぁ…は…ぁ…んっ」
「…ぁ…っはぁ…はぁ」
必死になっていた行為をどちらからと言わずとも止める。
「名前…」
私の首に腕を回しながら、天使のような彼女は私に問いかける。
「黒森…百合……」
「私は、白木詩音。ねぇ、百合」
いきなり呼び捨てされ私は驚く。
それ以外の反応が出来ないでいた。
「百合、私と付き合ってください。」
「…はっ?」
「死ぬまでの…ちょっとした遊び、みたいなものかな」
詩音の顔が近づいてくる。
でも私の顔にではなく、視界の下のほうへと移動する。
「…んっ」
首筋が熱い。
でも気持ち良い。
求められるって、こういうこと…?
今まで感じたことがない感覚で、溶けてしまいそうになる。
彼女の顔が首筋を離れる。
私はおかしくなってしまったんだろう。
彼女が顔を上げた瞬間、唇を奪った。
欲しい。
居場所が欲しい。
「…付き合おう」
こんな付き合い方が良いのかなんて分からないけど、きっとお互いに誰かが必要なんだ。
もう一度、今度は長く深く、キスをした。
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