現実を受け入れて

「やっぱり檸檬おかしいよ。例の恋人の事を聞いたら急に走り出すなんて……私が友達檸檬を助けないと」


きっと檸檬が変わってしまった原因はネット彼氏の人。それなら檸檬の家族に何か、彼氏に関する事を聞くしかない。


(ピンポーン)


檸檬の家のチャイムを鳴らす、数秒待つとチャイム越しに女の人が聞こえた。

これは檸檬のお母さんの声だ。


『里奈ちゃん、久しぶりねぇ……今行くからちょっと待っててねぇ』


(ガチャ)


「お久しぶりです」

「ホントにねぇ、今日は檸檬と遊ぶ為に来てくれたの?」

「違います、檸檬について教えて欲しいことがあるんです。檸檬が変わった理由について」


私がそういうと檸檬のお母さんは1度表情を曇らせて口を開く。


「……分からないの……何度も相談してくれるように言ったのだけれど教えてくれなくて……」

「多分、いえ間違いなく檸檬の彼氏が理由だと思うんです」

「え、彼氏が出来たなんて話聞いたこと」

「それが、成人済みのネット彼氏らしくて」

「それは本当!?」


実の娘がネットで、それも大きく歳を離れた相手と付き合ってるんだ、その驚きは相当なものだ。しかもそれネット彼氏こそが娘が変わった元凶だなんて。


「お願いです。檸檬の部屋に行って、スマホを取り上げて下さい」


そうすればきっと、何かが分かるはずだから。


「……でも部屋に入るとあの子怒っちゃって」


檸檬、本当に変わっちゃったんだ……

今の檸檬の部屋へ仮に無理やり入ったら最悪の事態もありうるだろうか。

なら、身の回りで檸檬の彼氏のヒントはなかったかな……


『えっとね……PickUpで会った人なんだけど……』


そうだ!言ってたじゃない!檸檬は確かにPickUpで会ったと言っていた。それなら……


「え、ブロックされてる……」


嘘……アカウント作り直すべき?


「あら、それPickUp?」

「え、もしかしてやってるんですか?」

「えぇ、たまに暇つぶしに見てるの」


檸檬のお母さんもやってたなんて……!

それならもしかして―――


「すみません!スマホ、貸して貰えませんか」

「え、はい……どうぞ」

「ありがとうございます!」


―――よし、大丈夫だ。ブロックはされていない。フォロー欄は……13人。この中で怪しい人は……

『らすニャ@恋人募集中』

『変態紳士』

『マスカット仮面』

の3つだろうか?他は配信内容を見るに女の人だから。

……というか、らすニャ@恋人募集中って人凄いな。

アイコンは自画像だけど加工が凄すぎて原型が無い……でも恋人募集中なら彼女いないってことになるかな?

とりあえず、この3人について誰か知らないかカズ君に聞いてみようかな。



らすニャさん……


(コンコン)


なに、またママなの?


「檸檬!」


違う、この声は……


「里奈?」

「ねぇ檸檬!部屋を開けて!」

「どうして」

「話したいことがあるの!」

「嫌」


ダメ、今だけは絶対に入れちゃダメ。


「ごめん檸檬!扉開ける!」


(バキィ!)

え、嘘……鍵かけてたのに扉壊された。


「檸檬!……え、な、なんで服着てないの!?」

「だからダメだって言ったじゃん……」

「あ、……ごめん」




「それで、何」

「檸檬の彼氏について!」

「だから―――」

「この人が檸檬の彼氏だよね?」

「え……、なんで」


どうして里奈が、らすニャさんの事を知ってるの?


「檸檬のお母さんのアカウントで見つけたの」

「そう、でも私がらすニャさんと付き合ってるから何」


うん、外野にらすニャさんと付き合ってることについて文句なんて言えないはずだ。


「何って……この人が原因で檸檬は今みたいになったんでしょ?さっき服脱いでたのだって」

「ちがう、私が望んでやったの」

「騙されてるんだよ!」

「だから違うって」

「ねぇ、檸檬はらすニャって人が自分の事を愛してくれるって言ってたよね」


そう、らすニャさんが、らすニャさんだけが私を愛してくれるんだ。


「でもおかしいよ!」

「おかしくない!」

「じゃあなんでらすニャ@なんて名前なの!本当に付き合っててあいしてるなら外してるでしょ!」

「それは外し忘れてるだけで……」

「それにこの人、檸檬が思っている以上にやばいよ」


らすニャさんがヤバい?何を言ってるの?


「この人、過去に未成年売春で捕まった記録があるの……それに、未成年との……えっとそういう写真もネットに上げてるの!」


え?知らない……何それ?


「ねぇ、檸檬、スマホ貸して」

「いや、やめて……」

「やり取り、見せて」

「嫌だ……」

「ごめんね……借りる」


だめだ……私は里奈に力に全く対抗できない。


「……何これ……胸をupした写真に、全裸の……やっぱりおかしいじゃん!」

「違う!おかしくない!らすニャさんは私を愛してくれてる!」

「愛してない!本当に愛してるならこんな写真求めないよ!ねぇ檸檬、おかしいと思わないの?」


知らない、私は知らない……


「それにここにある写真、らすニャって人は昔と同じように売ってて……それも檸檬以外にも交際してるかもしれない」


嘘だ、憶測だ。らすニャさんは裏切らない。


「ねぇ、檸檬……現実を受け入れてよ」

「嫌だ!現実は誰も私を愛してくれない……私は里奈と違って可愛くなくて、だから他の人は愛してくれない。でもらすニャだけは愛して―――」

「違うよ、檸檬は愛されてなかった」

「なんで……なんでそんな事言うの」

「なんならその人は檸檬の事を人だとすら思ってなかった」

「やめてよ!」


(パチンッ!)

「檸檬のバカ!こんなクソ男に愛されて喜ぶくらい悩んでたんなら言ってよ!」

「え……?」

「言ってくれたら私はこの男の1億倍檸檬の事愛してあげた!確かに私は女だけど、それでもこの男よりも愛してあげられたよ!」

「里奈……」


「檸檬……貴方そんなに悩んでたのね」

「お母さん」

「貴方は容姿で悩んでたのに気づいて上げられなくてごめんなさい……でもね、これだけは忘れないで欲しいの。私も、お父さんもあなたの事を世界の誰よりも愛してるってことを」


―――あぁ、そうだったんだ……現実から逃げて、盲目的になってたから気づけなかったけとこんな近くに本当に私を愛してくれる人がいたんだ……



「あーあ、なんか檸檬から返事こなくなったなぁ」


(ピロン)


「ん?『久しぶりです、らすニャさんと直接会いたいです』だって?」


……へへへ、ちょうどいいなぁどうせなら本番中の写真でも撮ってそれでひと稼ぎでもするか!


「えーと……久しぶり!俺も会いたかった、と」


「……よし、完璧!じゃあ来週の日曜日に臼公前うすこうまえで待ち合わせしよ……と」


さてさて、来週の日曜が楽しみだせぇ!




「……と、そろそろ檸檬が来る時間だな」

「―――あのぉ、らすニャ@彼女募集中さんですか?」


ん?ポリ公じゃねぇか……なんで俺の配信者ネームを知ってんだ?


「はい、そうですけど」

「家の大事な娘がお世話になったようで、

とりあえず児童ポルノとか色々犯罪の容疑かかってるから警察署で話伺いますねー」

「え―――」






「ねぇ里奈、今頃アイツお父さんに捕まってるかな?」

「うん!きっと捕まってるよ!あんな女の敵許しちゃいけないから」


あれから私は変わった。体型も……お母さんが健康に気を使ったご飯を工夫して作ってくれてるおかげでスリムになったと思う。

それに里奈が一緒に運動してくれるから。


「あーあ、また檸檬可愛くなったしそろそろ彼氏出来ちゃうのかなぁ?」

「うーん、当分は彼氏はいいかなぁ、代わりにさ里奈が私を愛してよ!約束でしょ?」

「全く檸檬は甘えん坊さんだなぁー!よし今日はとことん甘えたまえー」


あぁ、幸せ。今度は里奈に依存しちゃいそう。


Fin







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

依存型恋愛 ゆずリンゴ @katuhimemisawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画