最終話・とある男の最後の頁
"なんとなく"でこの旅は始まった。歩んでいる時も、登っている時も、ずっと"なんとなく"だった気がする。
結末、というものは訪れるものだと思っていた。不可侵的なもので、理不尽なものでもある、と。
この先・・・・・・、辿り着いた先で結末が選べるというのなら。
俺は、どんな終わり方を望むべきなんだろう。
階段を登りきる。そこは塔の中、ではなく、完全な外だった。
宇宙のように暗く、星々が彩る宙がすぐそこにあった。見る限りでは、地上はみえない。
・・・・・・なにも、ない。誰もいない。
ふと思った。結末を決めるとは「自分で決める」ということか? 場所だけは用意されている、この世界を探しても唯一無二の場所だ。
それでも、いいのかもな。
「いやいや、そうはならないでしょ」
どこからか声がする。若い。
「"塔の頂上にいる存在"としか言えないなぁ。名前は・・・・・・まあ秘密って事で」
言っている事は胡散臭いが、敵意も害意も感じられない。ただ、普通に喋っているだけだ。
「さて、君はこの塔を踏破したわけだけど」
そうだ。何がある。
「何か叶えたい願いはあるかい?」
……。
そうだ。そういえばそんな話だったな。忘れていた。というより、真実だったのか。
「なんでもいい。ここにいる限り思いつくことを全て叶えよう」
それはいいことだ。太っ腹な存在だこと。
「だが、実感を得るためには塔を下る必要がある。自分の目で確認する、という意味でね」
確かに。ここにいて無尽の金を手にしようが、永遠の命を手にしようが実感がなければ意味がない。
「さあ、何を願う?」
……そうだな。
俺の、願いは――。
* * *
「さあ、何を願う?」
超常の存在は問う。勝ち残った、勝者に。
「——。そうか、それが答え、か」
勝者である彼は答えた。全霊を以って。
彼は……。
いつからだろうか。この頂上に登りきった時、絶命していた。
立ってはいる。立ち尽くしている。
だが願いを伝えるだけの力は、残っていなかったのだろう。
故に、存在は”誤解をした”。
「終わりを求めたか。認めよう、勝者にふさわしい願いだ」
塔が揺れる。塔が、崩壊を始める。
「物語の終わり。旅の終わり。その終着点の崩壊でもって勇者の物語を締めくくる」
塔の崩壊は地上からも観測されていた。
誰もが塔を見ていた。誰もが目標を失っていく様相を呈していた。
だが、それは失望のような暗いものではない。
なにも起こらなかった。なんなのかが分からなかった塔が、変化している。
地上では混乱が大半で、しかし一部では確信を得た者がいた。
あの男がやった。
噂は伝播した。ある男が塔を制覇した、と。崩壊は勝利の証だと。
目標という幻想に囚われた冒険者を解き放ったと。そう伝わった。
後に、彼の物語はこう伝わる。
”神と相打ちになった男”と。
―――――――――――――――
ここまでありがとうございました。
初めてで至らぬ部分をひしひしと感じましたが、
一旦、これにておしまい。となります。
なにか心に残れば、最後に評価を付けていってくださると
次のモチベになります。
縁があれば、またお会いしましょう。ノシ
”なんとなく”世界の果ての塔に呼ばれているらしいので旅を始めます 確蟹爽 @Gauntlet0
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