くるみちゃんと僕
@ramia294
バーニーズマウンテンドッグ
コロコロ、
モフモフ、
生まれて間もないくせに
大きな身体
太い足
よちよち歩く
太い足
くるみちゃん……、
見つけた。
僕はくるみちゃんの家族になった。
くるみちゃんは、小学六年生。
僕は0歳、
よちよちの僕を抱きしめ、よたよたと歩く
くるみちゃん。
僕の身体はすぐに大きくなる。
ごはんをいっぱい食べて、大きくなる。
おやつも大好き。
もちろん、くるみちゃんがいちばん好き。
僕は、茶、黒、白の三色の毛皮。
トライカラー。
モフモフの毛皮は、くるみちゃんのお気に入り。
だから、僕は僕が大好き。
「とっても気持ちが良い、大好き」
そう言って、抱きしめてくれるくるみちゃん。
嬉しい!
だから、僕も僕が大好き。
お隣の猫のミケさんも僕と同じ色。
隣のオジサンは、ミケさんを抱きしめるのが大好き。
ミケさんは、嬉しいような、
迷惑なような、
複雑らしい。
ゆっくりと成長する僕。
くるみちゃん、中学生。
僕はイタズラ盛りの子供。
くるみちゃんの枕を振り回す
くるみちゃんの腕に甘噛み、
青痣だらけに。
くるみちゃん、高校生。
僕は大人に。
でも、相変わらずくるみちゃんに甘える僕。
くるみちゃん。
綺麗になる。
小学生の時と違い大人の階段を歩き出す。
初恋に小さな胸を痛める季節。
くるみちゃんの初恋は、バスケ部のキャプテン。
でも、ライバル多し。
星の夜。
僕に語る、初恋の甘酸っぱい
教室のひと時
あの人を追う視線に気付く放課後。
僕は願う。
くるみちゃんの幸せ。
と、
僕との散歩
おやつ
ごはん。
奇跡が……
くるみちゃん、
バスケ部のキャプテンと恋人に。
モテモテくるみちゃん?
いえいえ、僕との散歩中、
偶然遭遇したバスケ部のキャプテン。
彼は、犬好き。
話すきっかけになりました。
順調な恋の日々。
時々、僕との散歩に参加する彼。
爽やかな笑顔と優しく正直なイケメン。
僕には、負けるけどネ!
突然、波風立つ。
その夜、
くるみちゃん泣く。
涙を流して、僕に話す。
彼の浮気、
可愛い女の子と街をふたりで歩いていた、バスケ部のキャプテンの噂。
グルルルル!
あいつ、今度会ったら、噛みついてやる。
バスケ部のキャプテン、
翌日、わが家に現れる。
噛みついてやるぞ、
ウーと唸る僕。
青い顔の彼、
慌てて言い訳する彼。
誤解でした。
一緒に歩いていたのは、親戚の女の子。
連れてきた彼のいとこ。
可愛い女の子。
謝り誤解を解こうと必死な彼と、
安心して泣き出すくるみちゃん。
その姿を横目で見ていた彼のいとこ、
僕の頭を撫でると、
「勝てないわね」
涙がひと粒、
こぼれ落ちる。
僕は、彼女の顔をペロペロ。
元気を出してね、
君は可愛い。
きっと素敵な出会いが待ってるよ。
くるみちゃんの恋は、順調。
でも、僕の身体は……
最近、目が見えにくい。
守らないといけないのに、
でも、僕には自慢の鼻が。
目くらい、
へっちゃらダヨ。
くるみちゃん、
大学生。
彼との仲はアツアツ、フーフー。
僕はハァハァ。
最近、足が痛む。
守らないといけないのに、
何のこれくらい!
くるみちゃん、
結婚決まる。
僕も参加しなくちゃ。
蝶ネクタイを買って来てくれる。
一週間後、
楽しみだ。
最近、耳が聞こえにくい。
自慢の耳だったのに……。
守らないといけないのに、
何故か、心に張りが無い。
結婚式の前日。
クルミちゃん?が泣いている。
クルミちゃん?
もっと近くで、匂いをかがせて、
くるみちゃんに押し付ける僕の鼻。
あっ、やっぱりくるみちゃんだ。
ごめんね。
最近自慢の鼻が、
おかしいの。
足に力が、入らない。
身体を引きずって、くるみちゃんにスリスリ。
ごめんね。
だらしないよね、
僕。
守らないといけないのに、
くるみちゃんは、僕が守らないといけないのに。
動かない身体、
見えない目、
聞こえ無い耳。
そして、効かない鼻。
ごめんね、
僕は、どうかしてるね。
すぐに、元気を取り戻すからね。
待っててね。
あれ?
何故か目が閉じていく。
眠いのかな?
お昼に、いっぱい寝たのにね。
駄目だ。
もう僕の目、開いていられない。
身体も動かないや。
結婚式に、行かないといけないのに。
遠くで、くるみちゃんの泣き声が聞こえる。
僕は、バーニーズ、
バーニーズマウンテンドッグ。
短い命を君のために捧げる犬。
僕は、幸せな時間を過ごせました。
ありがとう、くるみちゃん。
生まれかわっても、やっぱりくるみちゃんの元へ。
約束だね。
コロコロ、
モフモフ、
生まれて間もないくせに
大きな身体
太い足
よちよち歩く
太い足
くるみちゃんはどこ?
おわり
くるみちゃんと僕 @ramia294
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