娘に子供ができちゃった

白川津 中々

「またお酒飲んでる」



 娘が俺を咎める。まぁ仕方がない。昼間っから酒飲んでる父親を見ればそんな苦言も言いたくなるだろう。



「すまんな。他に楽しみを知らない」


「ふぅん」



 味気ない会話。いつも通り、挨拶代わりの簡単な内容。だが、いつもと違って今日は話が終わっても娘は俺の側にいた。




「どうした」


「……あの、妊娠した」


「相手は?」


「彼氏」


「……」




 彼氏の一言で片付く問題ではなかった。だが、こういう時父親としてどう動くべきなのか、何を言うべきなんか、ちっとも分からなかったのだ。



「お前は産みたいのか?」



 そして、ようやく出てきた言葉がそれだった。



「冗談じゃない。高校生で子供なんて無理だよ」


「ま、そりゃそうだな」


「それで、堕ろすからお金欲しいんだけど」


「相手の男はなんと言ってるんだ」


「分からない。できた事も伝えてないし」


「まずはそこからだろ」


「でも、話したら絶対面倒くさいじゃん」


「そらまぁそうだけども、話ししない方が後々面倒くさくなるぞ」


「そりゃそうだけど……」


「俺も一緒に話すから、今度家に呼べ。金の事はその後に考えよう。というかお前、体調大丈夫か?」


「今は大丈夫。でも、相手を呼ぶのは嫌かな」


「どうして」


「なんとなく」


「……そうか」




 その後、「ともかく男と話してこい」としか言えなかった。つくづく父親失格である。しかし、どうせ俺が金を出すだろうというのは想像できた。しばらくは発泡酒生活だ。

 それにしても、子供というのは大変だ。

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