第2話 この狐は普通じゃないらしい

狐を抱えて家に戻った僕は急いで治療した。もちろん分からないからグー○ル先生を頼りにやれることをやった。

その結果狐は少し落ち着いたように眠っている。

「ふぅ…。とりあえずなんとかなったな。しっかしどう親父に伝えようか。」

「ワシに何を伝えるって?」

「わぁ!?ビックリした。急に後ろから覗くな。」

親父は悶々と考えてる僕の後ろから顔だけ覗かせて話しかけてきた。怖すぎるだろ。

「ふむ、狐か。弱ってたようだな。」

「分かるのか?」

「そりゃのぉ。しかし妙だ。」

妙?一体どこに疑問を抱いているんだ。

「本来狐は冬に強い生き物でもある。」

「確かに気温の低い北海道にすら普通にいるしな。」

僕もそれは気になっていた。何があったんだこの子に。

「不思議だな。まぁ、とりあえずこの様子ならすぐ元気になり、外に帰せるだろう。」

「そうだな。もう寝るよ僕。」

僕は自室に向かった。

考えることは多いけど今はゆっくり休もう。

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「……んん。」

寒さと鳥の囀りで自然と体が起きる。

朝日が眩しいくらいに差し込む。

流石に冬はどこに居ても寒いな。お腹も減ったし、布団から出て下に降りなければ……。

「ん?」

なんか足が温かい。湯たんぽってわけでもないからおかしい。僕は恐る恐る掛け布団の中をのぞいた。

「クゥーン」

直ぐに掛け布団を戻した。多分僕は寝ぼけているんだ。そうに違いない。

そう言い聞かせて下の洗面所に向かった。

顔を洗い。

「クゥーン」

歯磨きを済ませて、寝癖を整える。

「クゥーン」

居間に向かうと既に朝食が出来ていた。

母さんが用意してくれていたんだと一瞬で分かる料理。

「あら、おはよう晴明(はるあき)。」

「おはよう、母さん。」

いつもと変わらない日々。

だけど…。

「やっぱ夢じゃないのかよ!!」

「クゥーン?」

僕の叫びに応えるかのように狐は鳴いた。

「あらあら、仲がいいのね。」

おかしい。回復速度早すぎる。

普通に考えて結構弱っている生き物は一日中そっとじゃ治らないはずだ。なのにこの狐…

「翌日で元気になるってどうなってるんだ。」

「はぁ…朝からうるさいぞ晴明。」

上から降りてきた親父は毛のない頭を掻きつつ俺と狐を交互に見る。

「ほぉ…なるほどな。」

「何がなるほどだよ!説明してくれ。」

「後で教えてやる。それより飯だ飯。」

俺の怒鳴りに対して冷静な声で親父は言った。

それにしても…。狐ってない食べるんだ?

「はい、じゃみんな席に座って。この子には…油揚げかしら?」

「いや動物にそれはダメだろ。」

即却下だ。体に悪いに決まってる。

母さんは困ったがとりあえず果物とお水をあげた。

なぜか狐は悲しそうにしていたが気のせいだと思いたい。

僕たちはいつも通り食事を終え、各々やることを始める。

さて、こいつをどうするか。

「クゥーン」

狐は俺を見上げて…。なんか嬉しそう。

よし、自然に返そう。元気だしね。

「クゥ~ん」

わ、すっごい沈んでる。でもいつまでも面倒は見れないのだ。しかたないのだよ狐よ。

昨日出会った鳥居のそばにある山の茂みまで見送った。途中何度も振り向いてきたが僕はただ真っすぐを見た。け、決して寂しいわけじゃない。僕は心を鬼にしたのだから。

「じゃあな。こんどは倒れないようにな。」

「クゥ~ん」

寂しそうな声を発しながらも前へと進みだした。

それに合わせるかのように僕も歩みだす。いつか再会するかも分からないがお互いの幸せを願って。

「ありがとうございます!!やさしいひと!」

「!」

僕はその声のする方を振り返った。しかしそこにはもう狐の姿はなかった。

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あれから僕は直ぐに家へ帰った。雪を払い、玄関に上がると居間には親父が座って何か考え事をしていた。

「ただいま親父。どうしたん?」

「おお、おかえり。ちょっと気になることがあってな。」

気になることか。まさか。

「お前が見つけた狐にいろいろ疑問があった。なぜ回復が早く言葉を理解しているのか?」

確かにそれは僕も気になった。まるで狐が化けた人のように…。え?

人のよう?

「うむ。気づいたな。」

「まさかそんなわけ。」

「いいやありえる。この神社、我々『土御門家』。そしてお前の名前。」

俺の名前…。はるあき…晴明…せいめい。

確かに安倍晴明からとったとはいえ、そんなのって。

「ああ、物語のようだな。 『玉藻の前と晴明』」

「!」

あの玉藻の前が化けていると見破ったと言われているがあれは晴明の息子だったような。でも恨んでいておかしくないはずだ。

「それに、霊視でみたがあれは本物であるぞ。」

「は?」

「『九尾』であった。」

「な!?」

『九尾』だと?玉藻の前は確か九尾だ。そんなまさか。

「少し警戒をしなくては。」

「お、親父。僕はどうしたら。」

次あったときは命を。

嫌だ。まだ何もしていない。こんなところで青春無くして旅立ちたくない!

『ピーンポーン』

怯えているとき、ちょうど家のチャイムが鳴った。あまりにもタイミングが良すぎる。

「大丈夫じゃ。ワシがどうにかする。だからそこでじっと…ぬううん!?」

「親父!?」

台所へ向かおうとして急に親父が倒れた。まさかあの狐のせいなのか。

「晴明よ。この数珠をもっていろ。そうすれば安全に相手に太刀打ちできる。万が一にもな。」

「親父…。分かった。」

僕は本日何度目か分からないくらいの覚悟を決めて玄関に向かった。

ドアの小さな丸い窓みたいなやつを覗く。なんか黄色いもので覆われて見えない。

これはドアを開けるしかない。いざとなればこの数珠で。

「…。」

ゆっくりとドアを開けた。とんでもないものがいると思った。

が、そこにいたのは。

「あの!この度はお世話になりました。この前あなた方に助けられた狐です!お詫びとなるか分かりませんが、あなたのお嫁さんになるため参りました!」

とてつもなく、美しい美貌でキラキラした笑顔を向けていきなりプロポーズされた。

「は?はああああああああああああああ!?」

そこにいたのは九つの尾をもつ金髪ケモミミの女の子。

「えへ♡」

これが…僕と彼女(狐)の本当の運命的出会いの始まりでした。

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