嫁入り狐の金白さん
一ノ瀬詩音
第1話 鳥居の下の狐
「ふぇeeeeeeっくしゅんん゛ん゛。」
ああ寒い。何でこんな日に限って大雪なんだろうか。そしてなぜ僕がこんなにも独特なくしゃみをするほどの状況なのか。
そう、僕は今神社のあらゆるところを掃除しているのだ。僕の家は神社を管理している。古き歴史ある神社で、実は入れない倉庫があると言われておりそこにはかつて先代が扱っていた妖術や呪術など陰陽の道に進むためのものが多く保存されているらしい。
昔ガキの頃気になって、倉庫に行ったが父親にバレて中をのぞく前に意識を刈り取られたことがある。あの親父の頭突きは本当にやばい。下手したら人が成仏されるぐらいの勢いだぞ?
「クソ親父の頭突きはもうこりごりだ。つか、もう手伝い弟にやらせろよ。なんで高校生にもなって青春も捨ててまで仕事しなきゃいけないんだーー。」
はあ。溜息しかつけない。
ん?なんか後方からとてつもないオーラと勢いで何かが迫ってきているような……。
「んのおおおおおおおお。」
へ?
「はるあきいいいいいいいぃ」
げっ、あ、親父!?なんで怒って。
「このアホが!」
「ギャァぁあ。」
僕は悲鳴と共に頭に強烈な一撃をお見舞いされた。さっきまでの話がフリかのように同じことが起こった。
「お前はサボってないかと思えば大きなため息をつきおって。ここは神聖なる聖域と同じように清き心が導かれる御社ぞ?」
ぐぬぬ。ぐぅの音も出ないが。
「だからといって頭突きする必要はないだろ!」
「ほぉ、ではお主が最も恐れるものを持ってきてやろう。」
最も恐れるもの…。まさか、あれなのか?
「ば、り、か…」
「すいませんでした。」
親父が全てを言い切るよりも早く土下座した。この大事な髪を守るためにはやむを得ない。ましてやお坊さんでもない俺から親父とお揃いのスタイルとか嫌だ。
「ん?今邪なことを考えたな?」
「いえ、そんなことはないです。」
見透かしてやがるこのハゲ親父。ゆるさねぇ…。
「……。とりあえずちゃんと仕事をしなさい。次はばりか…。」
「わーった。やりますやります。」
親父は納得したようでその場を去った。どこで聞いてるのか、見ているのか分からないため大人しく今日も仕事をやるしかない。
青春送りたい。
なんかの運命で出会いとかないかな。神様にでもお願いして空からーとか。
………。
「ま、そんなこと起こるわけないよなー。」
半端諦めていた俺だが少しの希望を胸に秘めながら仕事を淡々とした。
そんなことだからだろうか。奇跡ということは起こるのだ。
出逢いはいつも突然で。
「…。狐?」
後ろから何かが倒れる音がしたと思えば振り返るとその音の正体が判明した。
そう、今にも息を引き取ってしまいそうな程弱った狐が鳥居の下に倒れていたのだ。
僕はそっと近寄り手を伸ばす。
「ウゥ。」
狐は警戒を辞めず僕を睨む。そりゃ抵抗できないくらい弱っており、何をしでかすか分からない人間に簡単に心を許すわけがない。
「大丈夫だ。今助けてやるから安心しろ。」
僕はそう言い、狐をじっと見つめた。狐も僕のことをじっと見つめ、数秒。理解してくれたのか身体を僕に預けた。
「後は任せろ。絶対助けてやるから。」
僕は狐を抱えて神社の隣にある家に急いで向かった。
これが、僕と狐の運命の出逢いだった。
嫁入り狐の金白さん 一ノ瀬詩音 @sion05
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