茜と探偵

“Я сделаю огромный гвоздь и уроню его на тебя.”

“What’s mean?”

「巨大な釘を作ってお前の上に落とそう」

“So.”

電車をバス停留所に座って待っていた。あたしと男とは会話をしていた。会話というよりもただの言葉のやり取りだった。

「茜」と男とは別の男があたしによびかけるのがわかった。音楽を聴いていたear -hornをあたしは耳から外した耳からは血が垂れていた。音楽はまだ小ないmicrophoneから漏れ続けていてあたりは踊りたくなるムードだった。

「あ、山田」とあたしは返事をした。というのも、あたしの名前を読んだ男が、振り返ってみたならば、山田だったからだ。しかし、このあたしが暮らす街の全十人のFamily nameは山田なんだ。だから、あたしも山田なんだ。だからここでつぶやかれた山田は、この世界にいるすべての山田へ向けた、「あ、山田」という呼びかけなんだ。

「そう、俺山田」と山田は答えた。

「なんか用?」

「とても用」

「へえ」

「うん」

とあたしたちは会話をした。いや、会話というよりもただの言葉のやりとりだった。

ロシア人の男が背が高くあたしたちを見下ろすようにして傘を指していた。雨が降っており、雨をはじく性質持っている傘を男が差しているのだった。そしてその傘の下にあたしと山田とロシア人がいるんだった。

「Я сделаю огромный гвоздь и уроню его на тебя.」とロシア人が喋った。

「Погода сегодня дождливая, так что я не расстроен. Пенис Дохтоевского.」と山田が喋った。山田はロシア語が喋れた。ゆえに喋った。

「あたしはロシア語喋れない」と私は喋った。

雨が降っていた。

雪も降っていた。

虹が輝いていた。

あと、雲がとても大きかった。

それは、一日だった。ロシア人とあたしと山田はそれぞれロシア人と山田と私のそばにいた。山田は立っていて私は座っていたロシア人はちょっと浮いていた。

で、さ。

「急に悪いんだけど、ついさっき、えっとなんかあってさ、大変なんだな」

「そう」

「駅前でパトリックが殺されたんだ。至急探偵が必要だ。だって、誰が殺したのか判明しなくちゃだからね。茜、探偵になってよ」

というわけである。あたしたちは駅前へ向かう。

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