@DojoKota

吸血鬼

そらにうかぶ吸血鬼つきとおなじいちにうかぶ吸血鬼。その吸血鬼に向かって手紙を出すことに決まった。日曜日。手紙を書くために紙にインクを垂らしたインクが紙の上を洋(ひろ)がっていった。紙の上に文字が500個ほど並んだ。紙を封筒に入れた封筒をポストに入れたポストを飛行機とロケットの中間みたいな機械の中に入れた。その機械が吸血鬼のうかんでいる場所までとんでいった。しばらくしてへんじがきた。ワタシタチハそれを読まないことにした。私たちは吸血鬼からの手紙は読まなかった。けれど一人だけ抜け駆けして読んだ子供がいた。その子供は吸血鬼になってしまった。その子供は打首にしてみた。そのあとでもういちど吸血鬼に手紙を書いた。その手紙はまだ投函されていない。まだ準備中で投函されていない。というにちじょうの中を茜はすごしていた。

茜はしょうがく6年生をすこしすぎたあたりだった。

なつめそうせきとみやざわけんじはよみおわったところだった。

かのじょの自宅には本が二冊しかなかった。

いっさつめはなつめそうせき

にさつめはみやざわけんじ

彼女はふといっさつめのなつめそうせきににさつめのみやざわけんじを手書きで書き写してみようと思った。そしたら二冊が一冊になると思った。実際二冊は一冊になった。ただのみやざわけんじのほんは小学校にもっていった。そしたらしょうがっこうのこうしゃよりただのみやざわけんじのほんのほうがほんとうにおおきくって校舎の中に入らなかた。校舎の中には図書室があった。図書室にも入らなかった。だから校庭においておいた。だれかがひろうだろうとおもった。だれもひろわずその本の上に落ち葉が降りしきった。降り積もった。コオロギが鳴いた。秋だった。

茜は、ぼんやりとかんがえごとをしていた。

「なぜだろう」と茜は呟いた。

茜はランドセルを背負っていた。

ランドセルの中にはなんにもなかった。

ランドセルは赤かった。

ランドセルは牛革でできていた。

学校の授業で、吸血鬼に手紙を書いた。読み書きの練習相手だった。まだ読めなかった。吸血鬼の描く文章は漢字とラテン語が多く森鴎外のようでよくよめなかった。茜はあきらめているわけではなかった。けれど、いまはまだよめないのだった。なので『あなたのかくもじはよめない』と茜は手紙に書いた。

今日、2通目の手紙が吸血鬼に向かって舞い上がる日だった。

茜は、感情がなかった。

茜は、他の授業も受けていた。

体育の授業もあった。

数学の授業もあった。

図画工作の授業もあった。

茜は、どれも得意だった。

茜には、クラスメイトがいた。

学校は細かい教室に分かれており教室一人当たりに20人くらいいた。

茜は、とある街に暮らしていた。その街には小学校があった。中学校があった。高校があった。専門学校があった。陸軍もあった。

陸軍では、茜の知らない大人たちが働いていた。陸軍は攻めていた。なにを?なんだろう。茜はまだそれをしらなかった。

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