没案プロット

生きる糧

死にたいと思った事がある。誰かに裏切られた時、期待に応えられなかった時、間違いを犯した時、逃げ出したくなった時、居場所を失った時、自身の限界を知った時、そして夢を捨てざるを得なかった時。

その度に、身近にある死を頭の中で思い浮かべては、日々頭の中には常に自分の死にゆく想像がこびり付いていた。

でも結局、こうして今も死ぬ事なく生きている。

だって明確に自分が死ぬ想像が出来たとしても、実現されるビジョンが見えなかったのだ。

誰かが死んだ時。死が間近にある事を知って、すぐ何処にでも死が潜んでいて、それを常に内包して生きていると実感する。

それでも結局、自分が死ぬビジョンは見えて来ない。

意図した死への接近でも、病による理不尽な接近でも。結局のところ、自分が死ぬビジョンなんてこれっぽっちも湧いてこなかった。

皮肉にも、それだけを糧に今日も自分は生きている。

死にたくても、死にそうでも。どれだけ死に方を考えても。

結局、自分には自分の死を掴む事が出来ないから。