毛の下は黒し。

この長年の恨み、

いつ晴らさんとするか!


ウサギさんは頭を抱え、

山道を歩きます。とことこ、とことこ。

すると、前から亀さんが

歩いてくるではありませんか!


ぎゃぎゃっ!亀さんじゃないか!

駆けっこに負け、ウサギの名に汚名を

着せられ、派や十年。

昔年の恨みこと亀。

すかさず、話しかけます。


何をしているんだい。


聞けば、亀さんは

ウミガメさんの元へ行きたいらしい。

ふんっ。だれが行かせるか!

いや、待てよ。

あの腹黒い、いや、甲羅黒い亀さんだ。

あの時の駆けっこも、

直前に亀さんに貰ったお茶を飲んでから

眠気に襲われたのだ。

じゃあ、その悪意を利用してやろう…。


それなら、天舟を使わないか?


亀さんは喜び、天舟に乗り、

飛び去って行きます。

それから、亀さんは

帰ってくると予定した時間を過ぎても

帰ってきません。


やはりか。と、ウサギさんは頷きます。


まだかなー。まだかなー。


ウサギさんが呟きます。

すると、ウサギさんを迎えにきた

別の天舟がやってきます。


ようやくきた!


ウサギさんは亀さんではなく、

迎えを待っていたのでした。


ウサギさんは、その天舟に乗り込み、

とある場所へ向かいます。

その場所は亀さんの家でした。


ウサギさんは亀さんの家に着くと、

無人、いや、無亀の家に乗り込み、

どうどうと部屋を物色します。


くっくっくっ、延滞金だよ。亀さん。


ウサギさんは不適な笑みをこぼし、

家中の物を盗み出し、

天舟に詰め込み、発進させます。


道中、亀さんに天舟を貸した場所を覗くと

亀さんと天舟がいました。

ウサギさんは話しかけます。


亀さーん。そんなに好きなら

それ、君にあげるよー!


これに気づいた亀さんは言います。


それは困る!

もう燃料が切れて動かないんだ。

これじゃ、重いだけだ。運べない!


そう言う亀さんの困り顔を堪能し、

ウサギさんは亀さんと貸した天舟を

置いたまま、月へ向かいます。


それからというもの、

重い鉄塊を引きずる音をさせながら、

ぜえぜえと言う声が山に響き、

その上にある月では、

ウサギが餅をつくのではなく

宴会を開くようになったのでした。

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かめめーん 斎藤 三津希 @saito_zuizui

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