サクラの樹(仮)

藤嶋 柊樹(ふじしま ひいらぎ)

1ページ目 プロローグ・スクリプト

 未来の話、大体2990年ぐらい。

 この国は、世界最大の科学都市になった。て言っても、別に空飛ぶ車があるわけでも、世界中のどこへでもいける道具があるわけじゃない。道路の整備は完璧になったり、ほぼ全ての電気が新しい発電方法で作られた電気なだけで、それ以外はほぼ変わってない。

 元々の技術力の高さが功を奏し、世界最大の科学都市と呼ばれるようになったことをこの国は科学者を筆頭に喜んでいた。それと同時に確実に科学力はこの国の専売特許と言わざるを得なくなった。世界中のメディアは、そんなこの国を見て「世界で唯一科学による発展が終わっている国、世界で唯一科学に責任を持つ国」と話題にしている。

 【私たちは、目的のために道を進む。ゴールは存在しない。それは科学者になった時に証明した。】

 そう、一人の科学者が言った。

 名前はアイリス・A・ノクトビット。彼の功績は世界で認められ、メディアでは科学の権威とまで言われている。歳は30。肌も髪も純白で、瞳は空のように澄んだ水色をしている。シワひとつない白衣の下にパーカーを着ているぐらいしか彼を責めるようなことがない。

 2991年5月6日、アイリスはある書物を調べていた。

 アイリスはその書物の名前を【万世原典】と名付けた。アイリスと仲間のイリシアがその本を調べ40日が経つ頃、アイリスは研究結果すいそくを出した。

 【万世原典には、全てが書かれている。全ての始まりから全ての終わりまで、そして神の居場所も】

 

 

 人々が最初の文明を築きあげていた頃、一つの国ができた。

 その名はノクエト王国。人口は少ないが、技術力は大陸中一番を誇っている。そして、その技術力の高さから大陸の他の国からは魔法都市ノクエトと呼ばれている。

 ノクエト王国は、世界樹を囲うように大陸の中央に位置している。

 世界樹の名は『カイズ』。大陸を覆うように広がっている世界樹を、大陸中の人間は神として祀っていた。ノクエト王国の建国祭では、今までの一年とこれからの一年を祝うために世界樹に光を灯し、朝の光で灯した光が見えなくなるその時まで祭りを楽しんでいた。

 ノクエト王国には、たった一人の魔術師がいる。

 名前はサリクス。見た目は白髪に首が隠れるほどの綺麗な白髭を生やしたご老人。レクス王とは友人の関係にある。サリクスが魔法を使えることはレクス王しか知らないが、サリクスが話しただけでレクス王には魔法を見せたことはない。

 カイズの中には、ある一つの書物が眠っている。

 その名は、万世原典スクリプト。サリクスとレクス王だけがこれに触れることができ、研究もサリクスとレクス王だけがやっている。この二人が出した最終的な研究結果すいそくはスクリプトにはすべての誕生から終末までの出来事が記されていることだ。

 

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