第6話

がたがたと、風が窓ガラスを鳴らしている。


真っ暗な七一四号室の中、入り口と丁度反対側の窓際で、誰かが外を眺めている。その見知った背格好に、私は扉を閉じて逃げようとしたが、まるで金縛りにでもかかったように、手足が全く動かなかった。


正面に立つ彼はゆっくりこちらを振り返った。茶色のくせ毛も、黒い眼鏡も、その風貌全てを私はよく知っている。


雷が落ち、部屋が明るく照らされた。


かくん、と首を横に倒した彼は、にたりと不気味に微笑んでいた。


その目は皿のように見開かれ、私の顔を凝視している。


そして、彼の口が開かれた。


「松崎先生、論文採用、おめでとうございます」

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嵐の夜の七一四号室 yomiasawa @aroga707

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