桃色の夕暮れ

暁香夏

桃色の夕暮れ

 どんよりと雲が支配する黄昏時

 桃色の夕暮れがやってくる


 小さい頃思っていた

 桃色は甘い夢の色

 かわいい妖精や天使が花を咲かせたり

 世界を優しい光で包むための色


 でも曇りの日の夕暮れは別の世界

 紫に近い怪しい桃色の世界

 妖精よりも薄気味悪い魔物の方が似合う

 妖美な色で人をおびき寄せ

 そのまま真っ暗な世界に引き込もうとしている


 もう闇が来る

 囮の桃色は消えた

 響く車のエンジンの音は魔物の唸り声

 ぼやけた街灯の光は悪魔の灯

 ヘッドライトに照らし出された

 木々の影が踊る


 星のない夜

 悪魔の宴会が始まる




 ※1996年頃の創作(アイデア)ノートより、編集。

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桃色の夕暮れ 暁香夏 @AkatsukiKanatsu

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