第5話
「アルコール全部使っちゃった…」
多分半分の量でも行けたのだろうが、炎が燃え上がるのが見てて楽しくなって来てやってしまった。
まぁ、この後にアルコールを使う機会は無いし、良いだろう。
その時、例の声が聞こえた。
『情報保管庫のスキルを手に入れた。』
頭が『情報保管庫』の使い方や効果を勝手に理解していく。
いや、理解させられていく。
自分にはこれが出来る、出来ないの物事が分かってきた。
(えーと、合言葉何にしよっか…)
スキルを発動させる為のキーワードや行動を決めておくと、簡単に発動させる事が出来るらしい。
まぁ、慣れたら何も言わなくても発動出来るんだとか。
(このスキルはどうやら魔力やマナなどで構成された物体を情報体として分解して自分の魂に保存するスキル。物体そのものを収納する事は厳しいが、情報として保存するのならば沢山保存できるな)
「んー……この能力なら”圧縮せよ”と”復元せよ”で保管と放出を担ったらいいか。」
リュックから今までに回収した魔石を取り出す。
「圧縮せよ。」
すると、魔石がポリゴン状に砕けていくのが見えた。
空中に散っていくポリゴンは、どこにいくともなく消えていく。
では、逆に出す方もやってみよう。
先ほどまであった場所に出現させるイメージをしてみる。
「復元せよ。」
スキルを発動させると、先ほどのポリゴンが集約し、魔石の形となって存在していた。
(なるほど、こういう感じね。…あ、そうだ。)
思いついたことがあったのでやってみようと思う。
このスキルは対象が魔力やマナで構成されている物質のみに対して発動するスキルだ。ならば、このダンジョンはその対象に入るのではないのだろうか?
意識をダンジョンの壁や柱に向け、スキルを発動させようと口を開いた。
「圧縮せ…ゴホッ⁉」
体全身から力が抜け、思わず崩れ落ちてしまう。
眩暈で視界がぐらんぐらんだ。焦点がうまく定まらないが、先ほど吐き出したモノが今朝の朝ご飯なのだという事はわかる。
妙に酸っぱい。
(あ、これやばい…)
体は横向きになり、口元からはよだれが流れていた。
地面に触れている部分の冷たさが肌に突き刺さる。
鼻と耳から滴る暖かい液状の何かが、生命の暖かさを感じさせていた。
何も周りから音が聞こえないせいか、心臓の高鳴る鼓動といきを繋ごうとする呼吸音がやけに響く。
「………ぃ…」
(生きたい…ずっと、生きていたい…)
先週に読んだ小説を思い出してしまう。
死んでしまったら、あの作品の続きはもう読めないのだ。
(こんな事なら、読むのを渋っていた続きも読むべきだった…!!)
“死”が鮮明になっていく感覚が体を蝕む様が、魂が深く深くと沈ませていく。
痛みよりも、脳の快楽物質が自分の生殖器を奮い立たせていた。
その時だった。
あの“声”が聞こえたのは。
『』
『錬金術のスキルを手に入れました。』
『降霊術のスキルを手に入れました。』
突然のスキルの入手。しかも一気に二つと来た。
2つのスキルの多大な情報量が頭の中に刻まれていく。
(あ、あたまがい、たい)
(しこうが、うまく、さだまらない)
今まで獲得したスキルとは別格なほどの情報量。少しずつスキルの使い方や仕組みがわかっていくが、もうこれ以上理解する事を頭が拒んでいる。
数秒もしない内に意識は遠のいていく。
安心した。もう、これ以上の苦しみはないのだと。
凡人ダンジョン黎明期~1から始まるダンジョン研究~ 木原 無二 @bomb444
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