第4話


準備体操をして、熱をそのまま維持していると、扉が開いた。


死体ははなかったので、早速入る事にした。


ボス部屋の内部は丸い円のようになっていた。

別に、これといった装飾もなく、柱や扉もない。



ボスは扉が閉まってから、部屋の中心点を起点に冒険者とは対角線上に出現する。

故に、真ん中に立っていたら真上に出現するという(死亡数1例)


(さて、やるか。)


目の前の空間に紫色の二重の円が出現し、その中心部分に巨大な水球、ビッグスライムが現れた。


自分の胸辺りくらいの大きさのスライム。

ぼよん、ぼよんとジャンプをしながらこちらの方に向かってくる。


身軽になる為に、リュックを入ってきた扉に置く。持ち物はスコップのみ。


そう、せっかくなので物理でどこまで行けるのか試したくなったのだ。


(燃やすのだったら何時でも行ける。けれど、ある意味こんな安全に格上と戦える機会なら、是非経験にしないと勿体ない。)


例え、相手が軽く燃やすだけで倒せる相手だとしても、物理的には圧倒的にこのボスの方が強い。


間合いを確かめる為に、スコップを軽く振り回したりして確かめて行く。

今までにモンスターを倒したせいか、スコップを片手で軽々しく振り回せた。


(これが、レベルアップの恩恵か…)


ステータスなどでレベルの表示は出てないが、体感として分かる全能感は、気分を最高潮にする。


ビッグスライムが間合いに入った瞬間、スコップの先で切りつけて、すぐさま移動する。


ビッグスライム何事もなかったかのように、先ほどまで自分のいた場所に飛んでいった。


次に、スコップの面でビッグスライムが着地した瞬間に押さえたが、それを容易く払い除けるかのようにジャンプして来たので、遠ざかる。


何回かそれを行った後、今度は空中で受ける事にした。


(あの大きさであの重さを真正面から受けたら、多分、潰れるな。)


例え、身体能力が上がったとしても、先ほどまで引き籠もり社会不適合者予備軍だった自分に、それを出来るとは無常仮寝にはイメージ出来なかった。


故に、左に飛んでくるように調節して、スコップで受け流すように受ける。



「ッ゙!!」


ドシン!と音はなっていないが、体感として自分の身体に大きな衝撃が走った。


(ああ、これは………物理で戦うもんじゃねぇな…)


本当にそうである。(死亡数1例)


だが、


何故だかわからないが、彼はライターに手を伸ばさなかった。


(こいつって、なんなんだろうな?)


飛んでくるビッグスライムに対して、また受け流す態勢をとる。


苦痛はある。

しんどいし、何よりも達成感が全くない。

しかし、無常はワクワクしていた。ただただ、面白いのだ。


別に、この行為が好きな訳じゃない。

この、目の前の”不思議”が無常の心をピョンピョンさせていた。


(知ってみたいな、コイツの中身。)


ビッグスライムが着地した瞬間を狙って、右手で触れる。


「観せろ。」


頭の中に、このボスの詳細的な情報が流れてくる。


(体重、60.256キロ。表面積、73.325平方メートル。成分表 マナ97%。後の成分は現段階では言語化不能。)


マナ、及び魔力は先ほど調べたカビリエンスからの情報で理解している。


(って事は魔石に内包されているエネルギーはマナか、未知の3%か…)


スコップでボスを切りつけながら、色々と考えていく。


(そもそも、この『情報観測者』というスキルは何を基準にして情報を精査している?)

(やはり自分自身の価値観の基準点が主になっているのだろうか?)

(と、なると。沢山検証が必要だな。)


ボスが着地する瞬間をもう一度狙い、右手で触れる。


「記憶を観せろ。」


その瞬間、そいつの記憶が流れ込んできた。




(…え?)


思わず、手が止まってしまうが、足だけを動かしてボスとの距離を取る。


(こいつは、に今さっき生まれたばかりなんだ…!)


こいつの記憶通りならば、ここにいるモンスターは全ていきなり現れたりするのかも知れない。


(つうか、誰かの記憶とか場合によっては情報量が結構多かったりするけど…考えてみたら戦闘中にする事じゃないな。)


さっさと焼くか。


もうそろそろいいだろうと、リュックの所まで走って燃やすための準備をする。


それじゃあしっかりとボス討伐放火魔するか。



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