True Eye 【season2】 -War 1- アダマスティア王国 Ⅲ

【Phase3:白狐討伐隊】


昼下がりのTE拠点


普通の人ならこんな天気の良い日はオフィスかなんかでコーヒーを飲みながら仕事をしているんだろう


しかし私らにそんな日常はあり得ない


「待て白狐ぉぉぉぉお!!!」


「待ちやがれ!!!」


「うわこっわ〜」


隊員総出で現在白狐の捕獲を行わされている


それは何故かって?


向こうの倉庫を見ると分かる


地盤が緩んで陥没して中にある戦車諸共土の中だ


そんな地盤を緩ませたのはアレン達なのだがそんな賢い事を狙ってあいつらは出来ない


そして話を聞くと白狐の指示らしい


つまりだ


全て白狐が悪い


「いやぁ私は別にお宝があるかも知れないって教えただけだよ〜?それを実際にやったのはあのちびっ子共なんだからお門違いじゃない〜?」


「ほざいてろ性悪狐が!てめぇの所為で休暇取り消しだ!!」


「午後の予定の埋め合わせはきっちりと見合った対価を払って貰わないとね」


そして隊員達も隊員達で日頃の鬱憤が溜まってるのかいつも以上に白狐に対しての敵意が凄まじい


「B班そっちに白狐が行く,少しでも時間を稼げ」


「お〜今回は守備がしっかりしてるね〜」


慣れたもんだ


ここ最近は白狐がやたらと私らTE部隊へと絡んでくる事が増えた


それもかなり悪質な感じに


週に一回は何かしらの問題を起こして私らは白狐を捕まえる為にこうして休暇を返上する羽目になってる


そりゃ慣れてもくるもんさ


寧ろ普段の依頼よりも疲れる


相手は妖,それも白狐だ


私らが束になっても捕まえる事は出来ない


それを白狐は遊び半分で私らの相手をしてるときたものだ


だが何も悪い事ばかりではない


「おわっ!?」


「外したわね…」


「相変わらず人間辞めてそうな事してんねぇ」


ナイフの跳弾…跳弾?


最早物理法則もあったもんじゃない


…いや,それだけじゃないだろう


あの雷鳴重工との戦いを得てシルヴィアの動きは明らかに変わった部分がある


シルヴィアの様子や言動は普段と変わらない


しかしその戦い方は以前と比べて強さを増しているだけではなかった


先程も見せたナイフの跳弾


正確には投げたナイフを更に別のナイフで弾き飛ばして軌道を変えるもの


ナイフでの戦闘に精通したシルヴィアならやってやれない事はない


だがそれはナイフだけには限らない


シルヴィアはナイフの他にもハンドガンを携行している


いざという時の為の予備の武装


そのハンドガンでもナイフ同様に跳弾を使いこなしている節があった


私はそのことに恐怖を覚えた


まるでシルヴィアが私の目には死んだ筈のサクヤと同じ様に見えてしょうがなかった


「荒川ぁ!壊しても構わねぇ!白狐諸共ぶっ飛ばせ!」


「さぁコーナーを曲がって正面には標的発見!それはさながら一年前のリベンジマッチ!前回は側面からの攻撃であえなくリタイアしてしまった白狐選手は正面から迎え撃つつもりだ!最強の矛と矛の戦いを今宵制するのは一体どちらだぁぁぁぁあ!!!」


「流石に二度も同じ手は通じない…よっと!」


おいおい…あれ確か輸送用のバギーじゃなかったか?


それを真っ二つに両断した白狐も白狐だが荒川を車輌に乗せるなよV…


「さぁてこんな見え見えの攻撃って事は…ソフィー辺りかなぁ?」


すぐさま飛んできた弾丸を容易に避ける


一説によると殺気を感じ取り避ける事は人間でも可能らしいが白狐の場合は弾丸を見てから避けている


正気の沙汰じゃない


「わざわざ大きな隙を晒してくれてありがとう,捕まえたわ…!」


「捕まえてどうするのかね〜………!?」


「逃げられないでしょ?驚いた?」


「………………」


「そこまでだ,これだけ囲まれてるんだ,そろそろ降参したらどうだ白狐」


「今の状態じゃ逃げる事も出来ないなぁ…分かった分かった降参するよ〜」


意外にも白狐はすんなりと降参した


確かにあれだけの人数に囲まれて銃を向けられたらそうせざるを得ない…というのはあくまでも人間の話だ


白狐なら亜空間に逃げるという手段もある


それなのに降参した…というのは気まぐれなのか否か…


シルヴィアに腕を掴まれた時の白狐のあの表情は滅多に見られるものではなかった


まるで自分の予測していなかった事態が起こったかの様な驚いた表情


シルヴィアは一体何をした?


「さて…折角捕まえたんだから報酬くらいは貰わないとね?」


「欲深い女だぁね…で?欲しい物は?」


「ナイフ一式,妖が使っても壊れないくらいの…ね」


「ふ〜ん?まぁ確かに今のままだとナイフの方が折れそうだもんねぇ」


それ以降白狐は面白半分でトラブルを引き起こさなくなった


これは寧ろ良い事だと言える


しかし私の中にあるこの胸騒ぎは一体なんなのだろうか


隊員…それもシルヴィア個人に対してだ


…いずれ取り返しのつかない事が起こるんじゃないかという得体の知れない胸騒ぎ


不安の9割は当たらないとはよく聞く


だが裏を返せば1割は当たるという事だ


「V,頼みがある」


「……入れ」


ただの考え過ぎならそれでいい


寧ろ私もそれを望んでいる


何もシルヴィアだけの話じゃない


私だって同じだ


私らは戦争を終わらせる戦争屋


そして必然的にも私らは力を持つ事になる


その力の種類が問題だ


力の種類によっては…人間でいられなくなる


妖と呼ばれる存在と成る事もあり得る話だ


過去に一度のみ世界政府が観測している


妖の種類には複数のパターンがある


人々の恐れられたイメージから生まれた者


獣から人へと成り上がり妖となった者


人間の好奇心によって造り出された者


そして…人間の域を超えて妖となった者


人間という器よりもその力が強大な物へと変貌した時


人の形を成しているのか人の姿を捨てるのか


異能と呼ばれる力はその始まりの段階なのかも知れない


だからこそ私は今回改めて隊員達の情報を纏め直した


TE部隊からその様な存在を出さない為にも


強大な力は自分にすら牙をたてる


それは自分すらも気付かずに自分自身を殺すだろう


誰一人としてそんな事はさせない


TE部隊隊長としても


私という一人の人間としても


「……いいんだな?お前が言ってる事は正直反吐が出る,それでも私がお前の要望を聞いて薬を作るのは…その方が世界の為だと思っているからだ,けどな,お前が本当にそれを使ったら私は一生お前を軽蔑する」


「…綺麗事じゃ守れないものもあるさ,私だって考えた上での答えだよ」


「……どれだけ時間がかかるかは分からねぇ,それまでは精々間違った事するんじゃねぇぞ」


その時が来るまで


いや……その時が来ない事を願うのが良いだろう


私自身が………














































































































人間を辞める時の事なんて


-Next war-

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