True Eye 【season2】 -War 1- アダマスティア王国 Ⅱ
【Phase2:ファクター】
TE拠点/ブリーフィングルーム
「皆集まって貰ってすまない,先日の雷鳴重工との戦いからまだ間もないが俺達は今転換期だと思っている」
「てんかんき?」
「毛の生え変わりみたいなものよ」
「理解」
「そんでー?転換期ってなんすか?」
「毛の生え変わりみたいなものって今言ったでしょ」
「そうじゃないっす!具体的な意味っす!!」
「お前ら騒ぐなよ,うるせぇんだよ」
「まず俺達の今後の動きについて話したい,今までは依頼を受けてその依頼をこなしていたが最近の世界情勢を見てそれだけでは不十分だと判断した,その為俺達は更にこれまで以上に出撃の頻度が増えると思う」
「つまり…依頼関係無く介入するって事?」
「あぁ,中国の一件や雷鳴重工を見るに企業そのものが戦争への介入が活発化してきている傾向がある,今までは武器の提供くらいだったんだがそれも次第に国同士の戦争に企業の陰謀が絡んで来ていると思っている」
「…結局は平和なセントラルシティにいながらも戦争に介入して金を稼ぐ奴もいるって事か」
「けどそれじゃあこれからの戦争は…」
「より一層激しさを増していくだろう,俺達の目的は戦争の終結,その為に今後は企業そのものを叩く必要がある」
「…質問なのだけど…企業…それこそセントラルシティの企業の大多数は世界政府傘下の企業が多い,その企業を叩くって事は世界政府と敵対を意味すると思うのだけど?」
「…あぁ,恐らく衝突する事は多くなるが今はまだ中立の立場を維持している,しかし今後何かあった時の場合に備えてプランを用意してある」
「で…?そのプランっていうのは?」
「まず俺達は傭兵企業から軍へと成り上がる,今までよりも更に大規模なものとなれば企業に対しての圧力も強くかけられるだろう」
「軍…ねぇ,言うのは簡単だけどまず圧倒的に人員が足りない,ましてや軍を名乗る以上選ぶ道は二つ,どこかの国に所属するか国を持つか……っておいまて…」
「…あぁ,俺は国を創り上げるつもりだ」
「はぁ!?」
「セントラルシティでの各国の会議は知ってるだろ?とは言ってもほとんどが世界政府に従うだけだ,だが力のある国ならどうだ?世界政府と対等の立場にいる存在なら」
「……確かにそれが可能なら今よりはマシにはなると思う…けど一気に話が飛躍し過ぎてない?」
「確かに飛躍し過ぎた話だ,だがそれを覚えておいて貰いたい,今後俺達が引き金を引く指の重さは重くなっていくからな」
「………………」
まさか国を作ると言うなんて驚いた
そんな話をされたとしても大半の人間は所詮絵空事と笑うだろう
だがここにいる人間は誰一人として笑わない
全員覚悟が決まっているからだろう
いくら力を持っていてもたかが一つの傭兵企業で切り捨てられる
しかしそれが国や軍となると一気に発言力を増す
悪化していく世界情勢の中でいくら綺麗事を並べたとしてもその発言に力が無ければ何にもならない
ルイスが言っているのはそういう事だろう
「そしてこの考えを既に実行に移している奴もいる,アダマスティア王国の名を聞いた事がある奴はいるか?」
「アダマスティア…?」
「そんな国聞いた覚えないわね…」
「はぁ…お前らもう少し政治について少しは興味を持ったらどうだ?」
「アダマスティア…アメリカの生き残りだろ?」
アダマスティア王国
それはつい最近になって国として独立した
それも企業がだ
幾つかの企業…その中でもAI技術に特化した企業群でセントラルシティでもトップクラスのAI技術を保有している
「既に国として独立している,世界政府傘下の企業だったが独立と共に世界政府傘下を離反,表向きは技術提供を行いながらアメリカ再建を目指しているが…」
「…まさか先日の…?」
「あぁ,恐らく裏で何か別の目的を持っていると考えた方がいい」
先日TE部隊はとある依頼を請け負い,いつもの様に戦場で依頼をこなしていた
だがこの時私らは明らかに普段とは違った敵と出会っていた
それはまるで人間というよりは機械だった
人の形をした鉄の要塞とでも言えば分かるだろうか?
そいつは突然現れた
今まで見た事もない敵だったが数はたったの一体
所属は不明だが敵であるならばやる事は一つ
しかし私の推測を遥かに超えた強さだった
その強さは妖にも匹敵する程でたった一体の出現で戦場は一気に泥沼と化した
双方に甚大な被害を出し,それに応戦した私らも楽な戦いではなかった
攻撃を諸共せずに向かってくる姿はまさに恐怖そのものだった
戦闘ヘリや戦車を相手にしているのとは違う
人型というだけでここまでも恐怖心を煽るものなのかと思った
しかし兵器といえど必ず弱点は存在する
やっとの思いで私らは弱点を突き止めて機能停止する事に成功した
だが問題はこの後だった
機能停止したその鉄の塊は兵器にしては奇妙な点があった
機械にはない人体が損傷した箇所から確認された
何故人型だったのかをようやく理解した
これは兵器というよりかはパワードアーマーに近いものだった
以前この手のものを見た事はあったがそれはまだ巨大でここまで小型化されたものを見るのは初めてだった
そして驚くべき事に…そのパワードアーマーの中にいた人間は既に死亡してから時間が経過していた
戦闘時間が約一時間程
血の変色からするとほぼこの戦場へと降り立って間もない頃に命を落としたものと思われる
人間を消耗品とした兵器…というわけだ
中の人間が誰なのかは分からなかったが識別名だけが判明した
ファクター
それがこの兵器の識別名だったのか中の人間の呼び名だったのかは分からない
だがこれほどまでの兵器を作れる企業は少ない
何故なら人型兵器は作るのに莫大な時間がかかり実戦投入するには遅過ぎる
その為大半の企業はより開発が容易い銃器等を専門としている
戦争は常に起こっている
だからこそ求められるのは実戦に即投入が可能な武器というわけだ
だが裏を返せばこの兵器を作った企業は十分な時間を持っていた企業という事になる
そしてこの世界でそれが可能な街
それはセントラルシティだ
間違いなくこの兵器はセントラルシティの企業に作られたものだ
「先日の破壊した兵器…ファクターの情報は見つからない事を考えると今回実戦に初投入されたものと考えていいだろう,テスト機体…プロトタイプという事になる,だがその強さは知っての通りだ」
「……あんなのが量産されたら…」
「それこそ世界のパワーバランスは一気に塗り変わる,あれだけの技術力を持つ企業は少ない,マリーの報告によればクロガネが怪しいらしい」
「クロガネ…?」
「クロガネAIリフィックス,AI技術でトップクラスの実績のある企業だ」
「AIだろ?今回出会したのは兵器だ,関係ねぇように思えるけどな」
「忘れたかV,確かにファクターは兵器だ,だがそれはあくまで外側の話,搭乗者が死んでも動き続けていた…つまり機械制御のAIが本体と言ってもいいだろう」
「…けどクロガネ社って…AI技術の他にも私達の生活を支えている企業よ?」
「そうなんすか?」
「貴女よくシリアル食べてるでしょ,あの懸賞のスポンサー誰だと思う?」
「クロガネ…確かにそう書いてあるっすね」
「表向きには善良な企業…けどそういう企業こそ裏がある,探ってみるのが良さそうね」
「だが俺達も容易に動ける訳でもない,ましてや今回のファクターが本当にクロガネの作り出した兵器なのかが分かるまでは手を出せない」
「その上で量産される前に叩く必要がある…か,厄介なもんだね」
あんな兵器が量産されたら後の祭りもいいところだ
人間を消耗品とした兵器なんか倫理的にも許す訳にはいかない
「今後はこのファクターに関しての情報は引き続きマリーに探らせる,俺達は今出来ることをやるだけだ」
「つまり…特にこれと言って当面はやる事は変わらないって事ね」
「いや?お前らには早急にやらなきゃいけない事があるだろ?」
「げっ……」
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