14.やられたらやり返す

「では、始めましょうか」

 翌日、私は攻撃魔法の授業をしようとする

「…って、あれ?なんかおかしくないですか?」

 明らかに人数が足りていない

 来ているのは4人

 ティ、ハル、双子の妹。そしておもちだ



「ノアさん。もう私たちに魔法、教えないでください」

 静寂を破ったのはやはり彼女だった

 無言の3人より前に出て、ティさんが何故か微笑みながらそんなことを言ってきた

「いやです」

 断ると、顔をしかめられる

「なんでですか?私たちが教えないでって言ってるのに…」

 4人ではなく、ティさんの瞳だけに視線を向けると、ちょうど目があった

 それに気がついたティさんは視線を少し下に向ける

「先日もいったと思いますが、これは私の実験でもあります。そう簡単にやめようとはおもいません」

 ティさんは、悩むようなそぶりを見せながら少し視線を彷徨わせたあとに、覚悟を決めた顔で私と目を合わせる

「教える、教えないの問題じゃないんです。…私たちはノアさんの授業を受けません。とにかく、これは黒組の総意見なので。それじゃあ……」

 言い終わった後に後ろを向いて帰ろうとする

 なので、私はティさんの左手を掴む

 そこまで力を入れていないが、ティさんは痛がる様子を見せた




(自分の言いたいことだけ言って、終わればさようなら?そんなの私が許すはずがありません。私は悪魔、それも魔王候補の。欲しいと思ったものを、そう簡単に手放すわけないでしょう。悪魔は強欲なんですよ?)

 自分の気持ちをまとめ終わり、ティさんに伝える

「あなたたちに手を出したのはAとBどちらですか?」

 ティさんが訳がわからないような顔をしている

「その傷、AかB。……私の取り巻きがつけましたよね?」 

 そう言いながら、ティさんの上着の裾をまくる

 包帯はしてあるが、傷が少し隠せていない

「こ、これは昨日ショーさんと模擬戦をした時にできた傷です!」

 誤魔化しているが、私に嘘は通じない

「模擬戦で魔法は使わないですよね?…この傷は火と風ですね」

 火傷の跡と切り傷、それと打撲痕だぼくこん

 隠しているが右足を少し引きずっている

「これほど証拠が出ているのに、誤魔化そうとするんですか?」

 ティさんが黙っていると、それを庇うように1人が前に出た




「てぃっ、ティさんを!これ以上責めないで…!!」

 双子の妹だ。何故か泣きそうな顔でティさんを庇っている

「…クルムちゃん、!」

 ティさんが彼女の名前を呼ぶ

(クルムって言うんですねー)

 私は、感動のシーンを演出する彼女たちに場違いな感想を持つ

 というか、今の立場って私がヴィラン側ですね

 絶対に取り巻きたちが悪いのに…

「はぁ……」

 溜息をつくと、ティさんとクルムさんの肩が跳ねる

(え、私ってそんな怖がられてんですか?知りませんでした。今度、黒組のみんなまとめて驚かしたら面白そうですね…)

 今後のことを考えてしまうほど、彼女らを手放したくないのだと気づく

(手放さない方がいいと、私の本能が認識している。なら、私たちのを倒しに行くとしますか…)

 怯えている2人を放置して、横で空気になっているハルさんとおもちさんの方へ視線を向ける

「ハルさん。詳しいことは歩きながら聞きます。あなたたちを傷つけたのは、金髪と黒髪、どちらですか?」

 どちらかを犯人を確定させる重要な情報

 しかし、ハルさんが口にしたのは耳を疑うようなことだった







「どちらでもありません。茶髪と緑髪の女子です」

 思考が止まった

 全くの心当たりがないからだ

 私を取り巻く悪魔は多数いるが、その特徴の悪魔はいない

「ハルさん。私はその悪魔に心当たりがありません」

 私が正直にそう伝えると、手に抱えられたおもちさんが首を傾げた

 そんな行動をしても仕方がないだろう

 私は犯人が分かっているような口調で話を進めていたのだから







「覚えている限りの情報をください。…犯人を特定しましょう」

 ここからは情報戦。相手は私が協力するとは思っていないだろう

 そのことを知る前に、やり返しましょう



 …やられたらやり返す、悪魔の世界の常識を教えてあげましょうか

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天才悪魔ちゃんは底辺に興味があるようです 黒丸 @kuromaru0522

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