13.魔法の授業


———翌日

「では、お勉強を始めまーす!」

 昨日、魔法を教えようとしたが日が暮れ始めていた

 おもちさんのウォーターボールについて話している間に、かなりの時間が流れていたようだ

 今始めてしまったら、終わる頃には夜になっていそうなので後日にした



「今日は休日なので、ゆっくり説明したいと思います。なので、分からなければすぐに質問してください」

 基礎は知っている方が良いと思い、魔法が使えない組だけでなく、黒組全体で勉強をすることにした

 教えやすいように、大きなホワイトボードを魔法で小さくして持ってきたのだ

(黒板が使えないので、わざわざ魔法を使って持ってこないと行けなくなりました。今日の青空教室はあったかくて大丈夫ですけど、そろそろ雨が降ったり暑くなったりする季節ですし、他の勉強も教えるのであればどこか場所を作らないとですね…)




「この中で、生活魔法と攻撃魔法の違いについて詳しく説明できる人はいますか?」

 その人は自主練をしてもらおうと思ったが、誰もいないようだ

「ティさんとかできそうですけど…」

 目があったので、なんとなく無茶振りしてみる

「できないですよ。まあ、簡単にでいいならできますけど…」

 思っているより冷静に返されてしまった

「そうですか…。まあ、生活魔法の方が分かりやすいと思うので生活魔法の説明から始めますねー」

 始め方が分からないので適当にやってみたが、みんな話を聞こうとしている

(…黒組のみんさんって、結構真面目ですね。底辺と見下している他の悪魔の方が不真面目って、皮肉な話ですね…)



「生活魔法は、魔力を水の枠や火の枠に送り込んで形にしているだけなんですよ」

 みんなわからなそうな顔をしているが、ハルさんの表情は変わっていない

「水の枠?…ってなんですか?」

 ショーさんが手を挙げて質問する

(手を挙げて質問するって、やっぱり黒組は行儀の良い人が多いですねー)

「ほとんどの悪魔が無意識で行う行為の名称ですね。例えるなら、クッキーの型抜きですかね?」

 黒組をチラッとみるが分かっていないようなので説明する

 分かりやすく説明できるように粘土と型抜きを魔法で作りだす

「魔力をクッキー生地、水の枠をこの型抜きだと考えます」

 クッキー生地(粘土)と型抜き(ひよこ型)を用意して型を取る

 ひよこ型の粘土ができたのでそれを持って説明を続ける

「魔力が水の枠を通りひよこになりました。…このひよこが、水の生活魔法というわけです。…理解した人ー!」

 手を挙げさせると、半分以上は挙げてくれたが数人は頭を悩ましている

 …補習かな?いや、それはめんどくさいし自主練でいいですね




「理解できなかった人は、魔力がどうやって生活魔法になっているかを意識しながら使ってみて、理解できるようにしてください。今日の授業は終わりです。攻撃魔法は次回するので今日分からなかった人は次までに周りに聞いてでも理解してください。もう無理!分からない!…と、いう方は個別で教えるので言いにきてください」

 無意識で疲れているのか、自分で話している文章が変な気でしかならない

 みんな納得した顔をしているので問題はないようだとホッとする





「では、残りは自主練ですね。使いたい魔法や、分からない魔法があれば聞いてくださいね。私は魔法の実験をしているので、何かあったら呼んでください」

 そう言い終わり、木陰に座り実験を始める

 今は混合魔法、同時展開魔法など、属性の違う攻撃魔法を一緒に使う方法の仮説と実験を繰り返している所だ

 あと一歩のところで最後のひらめきが足りない。あと一つで完成するジグゾーパズルの最後のピースを砂漠の中に落としたかのように検討がつかなくて、我武者羅がむしゃらに探し続ける

(最後のピースは、黒組が持っていそう)

 確証はないのに確信めいた思いがそこにはあった

 底辺の黒組に、私はどうしてこんなに期待をしているのだろう

 そう思っても、その思いは私の中で消えることはなかった

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