第5話 迷宮スカイツリー【〜第十階層】



【ドローン配信OFF】


“あれ、配信始まったんじゃないの?”

“一瞬別の人間映ってた気がするんだが”

“ドローンの調子悪いの?”

“メグル今日も無双頼むよ!!”

“もう少ししたら復旧するって、気長に待とう”


「ふぅ、危なかった。あと少し気付くのが遅れたらメグルじゃないってバレるところだった。一旦アカウントをタツローに戻してっと」


【冒険者アカウント】≪タツロー≫

【レベル】≪39≫

【ジョブ】≪略奪者≫

【所持金】≪14000G≫

【チャンネル登録者数】≪0≫

【攻撃スキル】≪パンチ≫

【固有スキル】≪強奪≫≪モザイク≫

【奪ったアカウント】≪メグル≫


 先程のゴブリンを討伐したことで、俺のレベルが上がっている。別のアカウントで倒したとしても、経験値とゴールドはしっかり反映されているみたいだ。


 【略奪者】は他人のアカウントを奪い取り、自分で操作する事で冒険を進めていくことができる。言ってしまえば、召喚獣に近いのかもしれない。


 このレベルアップによって会得した【モザイク】は、俺の姿を隠蔽するための偽装工作なのだろう。バレないためのカモフラージュの為だけに存在するスキルだ。


「今回はモザイク加工をした上で迷宮配信をやっていこうか。これなら問題なくメグルで無双出来るはずだ」


【ドローン配信ON】


“おっ、やっと始まったな”

“???”

“今日は珍しいプレイしてるんだね”

“メグるんの荒い映像だけでも興奮するから大丈夫だよ”

“化粧するの忘れたとか?”

“マジで誰だか分からんくらい、変なモザイクかかってるんだが”


 俺の体全体には、かなり荒いモザイクが施されている。辛うじて色が認識できる程度の強烈なモザイク処理だ。


 準備は整った。改めてゴブリン共を殲滅するとしよう。


 俺は襲いくるゴブリン達を叩きのめしていく。階層が上がるに連れてゴブリンの強さが徐々に増している。だが俺とのレベルの差がありすぎて、ゴブリンは俺に近づくことすら難しい状況だ。


「キシャシャシャシャ!!!」


 独特の鳴き声を発するゴブリンに対し、水魔法の【アクアボム】を使用。広範囲に水蒸気爆発を起こして敵を一掃していく。爆発の被害を免れたゴブリンは、一目散に上の階層へと撤退していった。


 凄まじい勢いで第一階層から第九階層まで進み、残すゴブリン地帯は第十階層のみとなる。



 ———東京迷宮スカイツリー【第十階層】


【同接】≪183507≫


(復帰後にも関わらず視聴者数が異常だな。だが残念なことに美少女配信者にモザイクは少々無理があるか)


“いっけぇ〜〜!!”

“楽勝だろ”

“女体映せ”

“これはこれで目新しいな”

“メグるん本人見れなくなるのはちとキツイ”


 批判的なコメントが多い現状だったが、俺はお構いなしに攻撃を開始した。


 奥の方から大きな地鳴りが響いている。撤退していったゴブリン達が立ち止まった先には、一際大きい図体をした巨大なゴブリンが歩いていた。第十階層を根城としているゴブリンの親玉である。


【モンスター名】≪ゴブリンキング≫

【レベル】≪53≫

【危険度】≪B+≫


 ダンジョンはレベル=強さと言っても過言ではない。これだけレベルが離れていると負ける気がしないが、まだ使ったことのない魔法を試す良い機会だ。


『ぐががががぁぁぁっ!!!!!!』


 図太い雄叫びと同時に突進を図るゴブリンキング。デカい体の割には意外と素早い動きを見せている。この体重でぶち当たったらさすがにヤバそうだ。


(奴を遮る壁を作り出そう)


 俺は【アクアウォール】を使用して、ゴブリンキングの倍近い大きさの水で構成された壁を発生させた。水の勢いは凄まじく、ゴブリンキングは壁にぶつかり跳ね返された。


『ぐぐぐっっ……?!!』


 小さな子分のゴブリン達が群れを成して襲いかかるも、【アクアバレット】によって撃ち抜かれ、呆気なく散っていった。


 ゴブリンキングは体を起こして再び迫ってくる。水の壁を大きく避けて、自身の身長くらいの棍棒を振り回し応戦。


(もうトドメを刺してもよさそうだ。最後にコイツを試してみるか……)


 【アクアインパクト】を発動する。凝縮した水が大きな塊となり、ゴブリンキングに向かってレーザーのように伸びて発射された。ゴブリンキングの分厚い肉体を意図も簡単に貫き、その場で倒れて戦闘不能となる。


(すごい破壊力。メグルどんだけ強いんだよ!)


“メグルなら当然だろ”

“マジでモザイクかける意味……”

“強すぎ”

“ゴブリンじゃ相手にならんだろ”

“無双する謎の女”


<みんな見に来てくれて嬉しいよ。また明日もよろしくね!>


【ドローン配信OFF】


「うはははっ、爽快爽快! ゴブリンキングの倒れ方エゲツなかったな。明日は学校あるけど、帰ったらまたダンジョン探索やろっと」


【冒険者アカウント】≪タツロー≫

【レベル】≪71≫

【ジョブ】≪略奪者≫

【所持金】≪24000G≫

【所持品】≪木製の宝箱≫

【チャンネル登録者数】≪0≫

【攻撃スキル】≪パンチ≫

【固有スキル】≪強奪≫≪モザイク≫≪裸体コピー≫

【奪ったアカウント】≪メグル≫


『レベルが71に上昇しました。新たなスキル【裸体コピー】を取得しました』


「おっ、また新しいスキル覚えてるじゃん」


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人気美少女配信者が引退したので、裏スキル『強奪』を使いアカウントを奪って無双配信する話 @0wc2k

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