第4話 迷宮スカイツリー【第一階層〜】
<みんな待たせちゃってごめんね! みんなのアイドルメグるんだよ!! 今日からまた頑張ってダンジョン配信やるから注目しててね!!>
メグルのアカウントで投稿を開始してから、一分も経たない内に大量のコメントが押し寄せてきた。
“良かったー”
“メグルお帰り”
“これからもメグルちゃんが見られると思うと嬉しいよ”
“間が空いたからちょっと同接落ちそうだな”
“一緒にダンジョン潜りたいなあ”
“んっ、メグル、キャラ変でもしたの?”
“いい事あったからテンション高めなんじゃね”
中身が男だとバレたら大変だ。俺は如何にも女子高生らしい振る舞いで、それっぽいことを書き込んでみた。
<早速のコメントありがとね! 実は、こないだすっごく嬉しいことがあったんだ! 私……学校で彼氏が出来たの! 二人で食事に行ったり、ゲームセンターで遊んだり、自宅でイチャイチャしたりで大変だったんだぁ♪ うふふ♪>
“メグルちゃんマジ……?!”
“俺の嫁だって信じてたのに”
“うふふwwwwwwwwwwwww”
“えっ、ほんとに彼氏出来てたんだ”
“メグルも汚されたんだな……はぁ、自宅で何やったんだよ”
“音符マークとか草”
このストーリーは俺の妄想に近い。実際のところメグルが何をしてるかなんて知る由もないから、女子高生がやりそうな事を適当に並べただけだ。
<今日の午後から東京迷宮スカイツリーに行くから、よかったらみんな見に来てね!>
これ以上のやり取りはボロが出るとまずいのでコメントは一旦おいといて、メグルのアカウント情報を見てみよう。
◆◆◆
「【奪ったアカウント】の一覧からメグルを選択して……変更っと」
【冒険者アカウント】≪メグル(裏)≫
【レベル】≪760≫
【ジョブ】≪水属性特化型魔術師≫
【所持金】≪0G≫
【チャンネル登録者数:3000524人】
【攻撃スキル】≪アクアシールド≫≪アクアボム≫≪アクアウォール≫≪アクアスプラッシュ≫≪アクアバレット≫≪アクアインパクト≫≪アクアヒール≫ ——————
【固有スキル】≪雨のフィールド生成≫
ステータスを眺めているとメグルが話しかけてきた。
『本当にアカウント強奪したのか確認したいから私にも見せてー』
「やっぱ人気美少女配信者って言われるだけあるよなー。登録者数が異次元すぎてビビる」
『チャンネル登録者数少し減ってるじゃん! さっきポチポチしてたけど、変なこと書き込んだんじゃない?!』
「メグルの日常を想像して書き込んだだけだから大丈夫だよ」
『どれどれ……いや、私彼氏いないし、出来たこともないんだけど……とにかく勝手に捏造するのはマズイでしょ! プライベート晒したこととか一度もないから!』
「書き込みは慎重に行わないとだな。何ならメグルに書き込んでもらうのも手だと思うけど、どうかな?」
『ダンジョン探索はやめたけど、元私のアカウントだしね。有る事無い事書き込まれても困るから、それくらいなら手伝ってもいいかな。私のスマホからは書き込めないから、達郎が近くにいないとダメだけどね』
「サンキュー助かるよ。俺はそろそろ迷宮スカイツリーに行くから、また明日学校で話そう。服は上着あげるから、羽織って帰った方がいいぞ」
『遠慮なく貰っていくね。じゃあまた明日!』
◆◆◆
俺にとっては初めてとなる東京迷宮スカイツリー。極め要素としての位置付けに当たるこのダンジョンは、自分の実力を試すには打って付けの場所である。
一階から三百階までの超高層大型ダンジョンであり、上層に行くに連れてモンスターの強さが強化されていく。当然手に入るゴールドや戦利品、経験値量も増えるので、配信の需要も高まっていくのだろう。
現時点で最上層に到達した人間はいない。上級者御用達のダンジョンなだけあって、挑戦する者が少ないのが現状だ。そんな過酷な迷宮スカイツリーだが、数いる冒険者の中で、最も高い階層に進んでいる冒険者が俺の学校にいる。
生徒会長の
「では早速入ってみるとしよう。アカウントは強奪したけど、やっぱり一階からのスタートになる感じだな」
———東京迷宮スカイツリー【第一階層】
「ふふっ、有象無象が沸いてやがるな。この程度の相手なら余裕過ぎて、鼻くそ穿りながら倒せるぜ!」
【アカウント変更……完了】
第一階層から第十階層まではゴブリンの巣窟。木の棍棒を片手に持ちながら一心不乱に動き回っている。ダンジョンに突入した俺を見るや否や、のっそりとしたスピードで向かってきた。
『シャッシャッシャッシャッ〜〜〜』
「雑魚どもめ、俺の力を存分に味わうといい。水の弾丸をお見舞いしてやる!!」
攻撃スキル≪アクアバレット≫を使用。人差し指と中指の先から水の塊が集まり始め、徐々に丸い球の塊へと形を変化させた。四本の指から連続で発射される水は、凄まじいスピードでゴブリン共を撃ち抜いていく。
『シャッシャッ……シャッ……』
次から次へと倒れていくゴブリンは、仮想通貨であるゴールドをポロポロと落とした。これだけでもそこそこの稼ぎにはなるだろう。
レベルが七百後半の俺にはゴブリンなど朝飯前である。というか何も苦労などしていない。
「楽勝楽勝! いやー簡単すぎて全然手応えなかったよ。メグルの実力も分かったことだし、そろそろ迷宮配信しよっかな」
【ドローン配信ON】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます