第一節 〝自称〟超一流魔女みならい、最大の失敗。
第1話 くだらなくもない朝でした。
「ふわぁあ〜〜あ」
さてさてみなさん。突然ですが問題です。
魔女、魔術師、占星術師、治療師、預言師、白魔導師、黒魔導師の職業に就いている人々がこの世で一番多く暮らしている国は、どんな国で、どのような名前の国でしょう?
シンキングタイム突入〜です!
ちくたく、
ちくたく、
ちくたく ちーん。
正解は、遠い昔に我が物顔で住み着いていた悪を討ち倒した英雄、大魔法師アグニータ・センデル・セイデン様を神として
あらすじを目にしたお方はおわかりでしたよね?
ならばもう1問。
そんな輝かしき栄光と素晴らしき歴史のある国マジカレメントの将来を担うことが、安易に予測されてしまう素晴らしい才能の持ち主、超一流魔女みならいだと、彼女を見た全ての者が頭を垂れてしまうほどの人物は、美少女は。一体誰でしょう?
ちくたく、
ちく、
たく。 ちーん。
正解は……誰を推薦しようとこの
わたくしヴィオトレッラ・ゴールドウッド・アブゾーラでした。超一流魔女みならいのヴィオトレッラです。
太陽のもとで煌めく
金と紫。なんとも気品溢れる色合いの少女。
さらにさらに? お国随一と名高い、魔法幼稚園を首席で卒業。その後お国随一と名高い、とある魔女に弟子入り。
他人への配慮、目上への気遣い。礼式も備え、意思表明だってちゃんとできる。草花たちも無い目を見張る美貌の持ち主、それに加えて才女である。
なんて頼りがいのある女の子なんだろう! 放っておく方がおかしいと言うものです。
「ヴィオラー? 朝ですよ〜」
まだ眠たげな声が下から届く。
「は、はい! 今降ります、フェンネアリア先生!」
自己紹介はここまでにして、
すぐに誘導されるようにリボンがしゅるりと首に巻かれる。生活魔法ってほんと便利!
綺麗に掛けられたローブを取り出して、大きな帽子も取って部屋を出る。
「ぅあっ、ちょちょ……」
まずい。と、閉めたドアを開けてもう一度部屋を確認する。カーテンは開けられているか、貴重品は机に出しっぱなしでないか。杖はポケットに入っているか。
「おういるぜ相棒! おはよーさん!」
「あらそうおはよう!」
ドアを閉めて階段の手すりをするり、と滑り降りていく。
まったく、道具だの杖だのが喋るだなんて、面白い細工をした人がいたものね。おかげで、杖の盗難はないし失せものだって滅多にない。
落とされたり、盗難にあったらまず先に声を上げるのは主じゃなくて杖なんだもの。
ため息を吐こうとした時にはもう既にくるくるっと螺旋状の階段の手すりを滑り降りていて、見事な着地を決めた。
「おはようございますフェンネマリア先生!」
「まぁたそんな降り方をしてぇ……ふわぁ……」
フェンネマリア・ラティスマー先生。
まだ赤ん坊だったあたしを拾い、育ててくれて……去年からは正式な師弟関係を結んでくださったお国随一の魔女。師匠もいいけれど、先生って言ったほうが弟子の魔女っぽいでしょう?
つまるところ、この方はあたしの自慢の先生ってわけ。
ゆるふわ〜〜っな、淡い桃色の髪と、ブルーグリーンの瞳が、なんとも可愛らしい。まさに、
◇
「まったく、もう少し早く起きなさいよね」
「なんだよケチケチすんなよ!」
朝っぱらから、わたしの弟子とその杖は互いを罵り合っていた。
実を言うと、これは毎朝恒例なの。
「寝坊のくせに何を偉そうに!」
「なんだよ自称、超一流魔女みならい!」
「自称じゃないし!?」
必ずどちらかが寝坊。……片方より数秒少し早く起きるだけで出遅れたもう片方が寝坊扱いになるらしいのだけれど……。
「自称だろ!
だいたい、ホムンクルス錬成も失敗したクセにな~んでそんな口が聞けるの、か……」
………ん?
「ん?」
「あっ、アンタ!」
杖はあからさまに色を悪くし始めて、しなる。それは明らかに、マズった。という時の合図でしょう。
「どういうこと? ヴィオラ?」
ヴィオトレッラの愛称、ヴィオラ。その単語を、己の出うる限りの最低音で発する。
ヴィオラは突然、バツが悪そうにどもりだして人差し指同士をこねこねと合わせて汗をかきはじめた。
「あーもう! 隠せるわけないわ!」
そう言って杖を握って地下室の方へ走っていってしまった。
わたしに、
「せ、先生ごめんなさい! ちょっとお時間いただきます!」
そう言い残して。
流星の如く旅路を輝らして〜超一流魔女みならいのわたくし。この度、ホムンクルス(失敗作)の親になりまして〜 彼岸りんね @higanrinne
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