ダンジョン配信はじめます!
大星雲進次郎
ダンジョン配信はじめます!
百年前、地上に「ダンジョン」が現れた。
ある自称冒険者と仲間の科学者が自慢の地底掘削メカ「超鋼鉄モグラ」でうっかり堀抜いてしまった穴の先には、広大な地底世界ではなく「ダンジョン」が広がっていたのだ。
地球の地底世界の奥深く、というか中心に発生したコアは十数億年かけて地球内部をダンジョン化していき、後数億年で地表に到達。地球はダンジョン惑星となる運命だった。
「ダンジョン」は現在は複数の地下帝国と長きにわたる戦争中であり、多方面戦を強いられていたのだが、
愚かな地上人類が通したその短絡路に沿って、ダンジョンは予定の一億倍の速さで地表に到達する事ができた。これで地下帝国を二方向から包囲できることになったダンジョンであったが、それは同時に地下帝国と地上人類とに挟み撃ちされているという事でもあった。
「ダンジョン」が既存の勢力と戦闘になる前には必ず毒性の物質を散布する。相手の生命力を大幅に削ってから本格的に侵攻するのだ。
新たに標的となった地上人類に対しても作戦は同じ。ダンジョン出口から吹き出した猛毒ガスにより、付近の木々は枯れ果て、動物昆虫あらゆる物が死に絶えた。
しかしここでダンジョンにとって想定外の事態が発生した。確かにダンジョンガスは世界を覆い尽くしたが、そのガスが空気よりやや軽かったためにほとんどが高高度で分解または宇宙空間に放出されてしまい、地表に留まったのは「空気に溶け込んだ」わずかな成分だけであった。
その成分を地上人類はなんと呼んだか?「魔力」だ。そう「魔力」、大気中に拡散したほんの僅かなその成分は地上の生物全てに劇的な変化をもたらした。実際は数世代かけての変化なのだが進化論からすればあり得ない速さで、生物達は「進化」したのだ。「魔法生物」の誕生だ。
そんな「魔法生物」世界の中でも元人類は卓越した存在となった。
そして高濃度のダンジョンガスに曝されようとも問題ない強靭な肉体を持つ者達「冒険者」が現れると、ダンジョンはもはや地上人類達の狩猟の場となり果てた。
「魔法」を操り、「スキル」を使いこなしてダンジョンの凶暴なモンスターを狩る彼等は、地上人類の憧れの存在となる。冒険者を志す若者は後を絶たず、ダンジョン出口、いやもはや入り口か、に造られた街には世界中の富と人が集まった。
そしてここに、新たな職業が誕生する。
「ダンジョン配信者」だ。
地上人類全てが憧れるダンジョンと冒険者。冒険者の数は増える傾向にはあるが、高い適性が必要なため誰でもがなれるものでもない。なので、彼らが戦う様子、ダンジョン内の恐ろしくも美しい景色、それらを世界中の映像ネットワークに紹介する職業、それが「ダンジョン配信者」である。
奇しくも今日、ひとりの「ダンジョン配信者」が誕生する。
彼は元S級冒険者であったが、勇者パーティー内でも実力は下の方、パーティーリーダーのパートナーを無理やり奪い、勇者パーティーから追放されたという、ズレテンプレな人物だ。自分を追放した勇者パーティーに復讐すべく、彼等がダンジョン内でミスをする瞬間を世界中に配信して溜飲を下げるつもりだ。
10年間使い慣れた装備を身にまとう。新たな装備であるビデオカメラは、試し撮りとして近所の猫を数時間追いかけて使い心地も完璧に把握していた。
彼が伝説の「ダンジョン配信者」となる戦いは、今始まるのだ。
ダンジョン配信はじめます! 大星雲進次郎 @SHINJIRO_G
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます