第2話 Scenario.2『先ずは一歩/チュートリアル』

 『Talk&occult』に於ける【契約者】は他で言う魔術師的なポジションに位置する。


『魔導書』や『悪魔』等と【約定】を結んで力を借りるのだ。


そして今俺は【約定】を結ぶ為に親に内緒でコンロで紙を焼いていた。


「…我は育み、我は消火す」


呪文を詠唱すると焼け焦げていた白紙が奇妙な事に、散り散りに裂け、空に浮かび、渦巻き、軈て小さな羽の生えた缶コーヒー程度の大きさの蜥蜴を形作る。


「…対価はサラダ油又はオリーブオイル」


予め用意した八分目迄サラダ油を浸けたガラス瓶を蓋を開けて差し出す。


火の蜥蜴/サラマンダーは赤く紅く燃える舌をちろちろと出しながら暫く此方を眺めた後にゆっくりとガラス瓶に歩み、登り入って行った。


「…ふぅ」


普通なら火に触れ破裂していた筈の油に奇妙な事に蜥蜴の形をした火が寝ていた。


TRPG的に言うなれば【Feuerpuhzフォイエルプーツの契約瓶】を手に入れた、と言ったところだ。


記憶が正しければサラマンダーが入った事によりこの瓶は基本的に壊れなくなった…筈、多分。ちょっと心配だが大丈夫だろう。


懸念であった実験が成功した事も喜ばしい。

本来『Talkトーク&アンドoccultオカルト』の現代シナリオに於いて【約定】の派生スキル[契約:精霊]は修得出来ない。何故なら精霊との契約方法は呪文を含めて総て喪われているから…メタ的な話をするなら現代シナリオだと対価の確保が容易過ぎて完全にチートになっちゃうからなのだが。飽く迄この世界は現実であるが故に知識さえ有れば契約可能だったのだろう。


チーターと言いたければ言え、舐めプをしようものなら簡単に死ぬのが『Talk&occult』の一般モブなのだ。


[契約:精霊]と【Feuerpuhzフォイエルプーツの契約瓶】で使える秘跡は確か…


火炉の吐息スーフル〉と〈蜥蜴の毒霧ルブロード〉だったか。

蜥蜴の毒霧ルブロード〉は使えないな、流石に毒ガスは不味い。

火炉の吐息スーフル〉は普通に火炎放射、普通に強い。


やる事やったので最近の日課のボクシング動画を観ながらシャドーの練習をする事にする。




――――――――――――――――――――――〈探索者の手帳キャラクターシート

【基礎】

―[拳闘:素人]

―〈フック〉

―〈ストレート〉

【加護】

―[祓魔:独学]

―〈十字切り〉

【約定】

―[契約:精霊]

―〈火炉の吐息スーフル

―〈蜥蜴の毒霧ルブロード

聖遺物アーティファクト

Feuerpuhzフォイエルプーツの契約瓶】

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探索者Aはラブコメに向かない 南瓜の王冠 @pumpkinthecrown

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