第3話 安藤家質疑回答
「センサー式照明は、屋外や廊下やトイレなどにつけるぶんには便利ですけど、居室や寝室には通常つけないんですよ。
例えば、寝室に着けてしまうと、寝返りを打った際に反応して点灯したりすると、それが原因で目が覚めてしまったりすると思うんですね。
どうしても寝室や他の居室にも必要な事情があるのでしょうか?」
高橋は、率直に安藤に問うた。
「はい、通常は仰るとおりだと思うのですが、母は日中にも長時間昼寝をしたりすることもあって、突然夜中に起きて家の中を動き回ることが多々あるんです。」
安藤は若干途切れがちながらも話しだした。
「ご覧になったように、右足を引きずって歩いているんですが、あれも私が寝入っている間に家の中をウロウロして転倒しまして、それが原因なんです。
私も母を見るのにも限界があるので、どうせウロウロするなら足元が明るいほうが良いのではないかと思いまして。」
高橋は、なるほど、とは思った。
高橋も、工業高校を卒業してしばらくは、隣町のアパートに住みつつあちこちとアルバイトをしたあと実家に戻り、高橋電気サービスの仕事をしだしたので、実家住まいになってからは祖母の世話もそれなりにはした経験がある。
祖母は最後の1年程度は老人ホームに預けていた。
認知症はあったが健脚だったため、施設の職員の方の目を盗んで脱走しかけたところを転倒し、それがきっかけで寝たきり状態になった。
安藤母は、右足が若干不自由ながらも歩けるだけ、まだ良いのかもしれない。
90代でひどく足を痛めた場合、まず間違いなく寝たきりになってしまうだろう。
「足を痛めたあとに、母の居室に外から鍵をかけられるようにはしたのですが、なんだか監禁しているようで私も気持ちが良くありませんでした。
現在は、縁側も含め、ホームセンターで買ってきた簡単な南京錠をとりつけて、外には出ないようにしてから、私が寝ることにしています。
家の中を多少歩き回るのは、足の筋肉の維持にとっても良いのではないか、と考えまして。」
高橋の中でも、だんだんと奇妙は奇妙だが、説明を聞くうちに半分くらい納得する気持ちも出てきた。
しかし
「廊下・階段なのですが、センサー内蔵モデルの照明器具を、ご希望のように1m間隔で新規に設置されると、照明の個数がかなり増えてしまいます。
天井高が2.4mであれば検知範囲は直径2.4m程度になるので、例えば、100W型相当の明るい照明器具を2mから3m間隔ぐらいで設置するとか
既存の壁スイッチをセンサー付きのスイッチに改修して、器具自体はセンサを内蔵していない通常の機種で増設するとか
独立したセンサを天井に設置し、設置場所を工夫することでムラのない検知範囲を確保するとか
色んな方法を検討すれば、コストを抑えながら、ご希望の条件に沿うような施工ができるのではないか、と思いますが。」
居室や寝室にセンサー式照明は必要ですか? @Setz-chy
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