追加話:揺らめく想いの波紋

夕暮れがプールに映り込み、鮮やかな橙色の光が水面に反射している。二人の間には言葉にできない感情が漂い、自然とお互いがその余韻に浸るようにしていた。


ふと、片方が立ち上がり、プールの縁に足を浸したまま水面をぼんやりと見つめる。もう一人はその姿を横目で追いながら、静かに息をつく。


「…なんだか、今日が終わってしまうのが、少し寂しいかも」

その言葉は、夕暮れに溶けるように静かに響き、プールの水面に小さな波紋を生んだ。


もう一人もプールの縁に腰かけ、隣に並ぶようにして座った。「私も…こんなにゆっくり二人で過ごしたこと、今までなかったから」


再び訪れる静けさ。しかしその沈黙には、心地よさがあった。二人はそっと視線を交わし、気付けば手が触れ合っていた。柔らかな指先が触れ合うたびに、まるでプールの水が揺らめくように、彼女たちの心も揺れ動く。


そのままの状態で、ふと片方が言葉を紡ぐ。「ねぇ、私たちって…何なんだろうね」

もう一人は、しばらく黙った後、小さく微笑んで答えた。「分からない。でも、今はそれでいいかも」


その言葉に、二人はただ微笑み合いながら、再びマカロンを一つずつ取り出した。夕焼け色に染まった空の下で甘いマカロンを口に含むと、プールサイドにいる現実がどこか遠く、夢の中にいるかのように感じられた。


次第に日が沈み、空が深い群青色に変わると、二人は自然と寄り添うように肩を重ねた。プールの静寂に包まれたまま、二人はただ、今この瞬間だけを共有し続けていた。

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プールとマカロン 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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