後編:マカロンの甘さ

プールサイドに上がった二人は、水に濡れた髪をタオルで軽く拭きながら、並んで座っていた。静寂の中に響くのは遠くで聞こえる風の音と、ゆっくりとした彼女たちの呼吸だけ。傍らには小さな皿に盛られたカラフルなマカロンが並んでいた。


「さっき言ってたから、つい持ってきちゃった」と、片方が少し照れくさそうにマカロンを差し出す。

「ありがとう。プールで食べるなんて、なんか変な感じだけど…でも、特別な感じもするね」と、もう一人が微笑む。


彼女たちは一つずつマカロンを手に取り、ゆっくりと口に運んだ。外はさくっと、内側からはじんわりと甘みが広がる。その味わいが、何とも言えない安心感と幸福感を彼女たちに与えた。


「甘いね…」

「うん、まるで…この時間みたい」


その言葉に、二人はふと見つめ合った。ほんの少しの距離にある彼女たちの顔が、水面に映る光と同じように揺らめいている。お互いの瞳の奥に、どこか小さな期待や甘い緊張が見え隠れしていた。


思わず、片方がそっと相手の髪に触れた。濡れて冷たい髪が指先に伝わり、それが妙に心地よい。相手も驚いた様子だったが、そのまま微笑んで彼女の指に頷くように触れた。


「不思議だね、こんな風に二人だけの時間が過ごせるなんて」

「うん、まるで夢みたい」


また静寂が訪れたが、その静けさはもはや重たくはなかった。二人の間に流れる時間が、マカロンの甘さと共に、穏やかに深みを増していく。彼女たちは再びマカロンを一口ずつかじりながら、プールの青に吸い込まれるように並んで座り続けた。


遠くの空が少しずつ夕暮れに染まり始め、ほんのりと赤みを帯びた光が彼女たちを包み込む。それでも二人は、互いの温もりと甘さに溶け込むように寄り添い、また静かなプールに戻った。二人だけの密やかなひとときが、心の中に深く刻まれるのを感じながら。

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