4.ヤンデレハンターと湖ダンジョン

「今日はハンターさんが化け魚を捕まえる! そんな回にしようと思います!」


 僕は今日も借金返済を目標にダンジョン配信を行っていく。不良ギルドメンバーの紹介料金を返すために、今日も有名人とコラボをしていくのだ。

 今回に関しては趣旨も分かりやすい。

 森の中にある拓けた湖のダンジョン。時たま上半身が馬、下半身が魚のとんでもない魔物が顔を出している。

 本日のターゲットはあれだ。

 僕が颯爽と構えている彼女にカメラを向けていたのだが。突如として、こちらに大きな大剣を向けてきた。


「……といった趣旨なんだけどな! 今日は気になるあの人の狩り方について教えてやろうかと思ったぜ!」


 ハンターの勝気な少女。逆にこの方が裏がないと思って、コラボ相手に向かったのだが。


「いきなりの趣旨変更!? そして、何でこっちが気になる人になってんの!?」

「気にすんなって! ちょいと体、動かなくなってくれれば……うちに飾れるんだ。いい装飾品になってくれよ!」

「やだよ!? 何で!?」


 僕が彼女と距離を取ろうとした際に飛んだこちらの汗。それが勢いよく彼女の顔に付着した。そこを彼女は舌なめずり。


「はぁ……男の香り……男の汗……はぁ、はぁ……フェロモン……人のフェロモン、たまんねぇ……」

「やべぇ! またやべぇ奴引いちゃったんだけど!」


 彼女は大事であるはずの剣を放った。カランコロンと大きな音を出したかと思うと、ぽちゃんと水の中に。

 僕は一応指摘する。


「あれ、来る時……『これは命よりも重い大剣なんだ……傷付いたら二度と戻らねぇ。ちゃんと整備しねぇと! いい剣は百年長持ちするんだぜ』とか言ってなかったか!? あれ、凄い深刻そうな物言いだったよな!?」

「そんなの関係ねぇ! あんな奴とは今日限りでお終いだ! んなことより、んものの男の方が大事だぁ……!」


 どのように逃げればいいかが分からない。

 今回は本当に俺を狙っている。さながら目の前にいる女が獣のように四つ足になる。またもや炎上だ。

 『女の子になんちゅうプレイ強要してんだよ!?』『興奮する……!』『好みの展開来たァ! そのままやっちまえ! 二度目のBANだっ!』。

 健全チャンネル目指してるんですけれどもっ!?

 奴は野性的に近寄ってくる。

 逃げる場所と言えば、湖の中。しかし、いるのは馬のような魚のような、よく分からない魔物だ。そのまま戦ったら、なんにせよ食われる。

 立ち向かっても違う意味で食われそうだ。

 そんな時、ふと湖の中から人型の何かが現れた。


「貴方の落としたのは、この銀の剣ですか? それとも、金の剣ですか?」


 聞いたことがある。ダンジョンの湖にそんな存在がいるとか。正直ものだと金の剣が貰えるとか。

 ハンターの方はすぐに気付いたのか。


「あ……もっと、普通の剣だ」

「正直ものですね」


 欲に正直になる彼女。彼女の元に金の剣が……渡されることはなく。女神は女の元まで歩いていく。


「ちょっと来なさい。転がってきた剣が私のケツに刺さったんです……おしおきです」

「あっ、ちょっ!? 今から狩りが!」

「んなのはどうでもいいです!」


 彼女はずるずると湖の中へ連れていかれてしまった。

 た、助かったようで。

 その後、発見された彼女は人が変わっていたかのように大人しくなっていたみたいだ。

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ダンジョンコラボ配信でバズりたいと思いますが、変人しか集まりません 夜野 舞斗 @okoshino

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