第2話 彷徨う〜第一村人発見

 小屋を出て霧を抜けると確かに森へ出た。気がつくと霧は跡形もなく、もう神域へは戻れないようだ。

「さて、これからどうすべきか…」

 ふと学校帰りでカバンを背負っていたのを思い出したので開けてみる。

「oh...」

 全力疾走をしたので弁当箱が開いてしまったのだろう。汁で汚れた教科書、ノート、筆箱、小腹用のブラックサンダー、ポケットティッシュが入っていた。

「とりあえず水と食料か。あと動物か?また猪とか出てきたらマズイし。」

 俺は辺りを見回すと「良い感じの木の枝」を見つけた。攻撃力が1上がったような気がした!

 少し気が良くなった俺はとりあえず川を探しつつ森を抜ける事にした。

「そういえば神さんは魔法が使えるって言っていたな。試してみるか、ファイアボール!」

 出ない。

「フゥアィヤァボォウルゥ!!」

 気合いをこめたが出ない。

「…はぁ、ステータスオープン」

 やっぱり出ない。

「詠唱とか適性とかあるのかな〜」


 俺は当てもなく歩き出した。しかし、しばらく経っても辺りは変わり映えしない木、木、木ばかりで飽きてきた。

「我が敵より身を守らん!ウォーターウォール!!」

「精霊よ!我が望みを叶えん!シルフィブレス!!」

「天空満つるところ我はあり、黄泉の門開くところ〜以下省略〜イン◯◯ニション!!」

 友人に見られたら黒歴史待った無しなことをしていたら小川を見つけた。

「水だ!」

 俺は喜びのあまり顔を突っ込み直に水を飲む。

「うめぇ!これが異世界の味か!(?)」

 意味不明な発言は置いといて、俺は人里を目指し下流へと向かう。


 3,4時間は歩いただろうか。俺はとある問題に直面している。

「はぁはぁ…、下痢が止まらなぇ。」

 生水を飲んだからだろう。出すものは出したが吐き気が止まらず足取りが重い。

 夕闇も迫り、ちょうど良く風を凌そうな木の洞を見つけ身を隠す。俺は喉の渇きを我慢し、なけなしのブラックサンダーを齧った。

 体を休めなければならないが、眠れない。動物を警戒し、風の音さえも恐ろしい。


 …日が昇るころ、うとうとしていた俺は痛みで目が覚めた。

「痛っ!」

 痛みの原因に目を向けるとウサギだった。しかし俺の知っているウサギではない。

 鉤爪のように長い爪、牙のように尖っている歯、額に赤い宝石のような物が着いている。

 俺は一つの考えに至り顔を青ざめた。

「ま…魔物!?」

 魔法があるなら魔物だっているだろう。俺はカバンを抱え駆け出す。

 恐い、恐い!恐い!!

 なりふり構わず走っていたが、足がもつれ倒れてしまう。

 その時、視界に二足歩行の大きな影が映った。

「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

「おめぇ、何してんだべか?」

 それが異世界での初めての友人ベスとの出会いだった。

 俺は恐怖と安堵から…漏らしていた。

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先生と呼ばれた男〜男子校生異世界奮闘記〜 凡さん @hase108

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