第10話
「……ここは……」
ルシウスが目を覚ますと、辺り一面、真っ白な空間が広がっていた。隣では少し遅れてリリーと阿座丸も目を覚ます。
「あたしは一体……。はっ、傷が治って……」
「本当でござる! しかし、拙者たちは死んでしまったということでござるか……」
阿座丸は俯く。
すると、どこからか声が響いた。
「ここは天国ではない。ここはサンテリア彗星島の第四層『虹の間』の祠だ。我は龍神。ルシウス、我はお前をずっと待っていた」
ルシウスは驚いて目を見開いた。
「……お前は気づいていただろう? リリー・アザナエル」
「なんとなくだけどね。最初に違和感を感じたのは、サンテリア彗星島に来たときさ。私たちがどうやって彗星島に入るか悩んでいたとき、そこに偶然阿座丸が現れた」
阿座丸は慌てて手を振る。
「あ、あれは本当に偶然でござるよ! 決してつけていたわけではない!」
龍神はそれをわかっているように微笑んだ。
「我が少々道を変えたのだ。おかげで阿座丸は予定よりも早く到着し、お前たちに追いついたというわけだ」
「なるほど……。流石は龍神殿でござる」
リリーはさらに疑問を続ける。
「もう一つ違和感を感じたのは、島の村での出来事だ。サンテリア彗星島は有名な観光地のはずなのに、村人たちはルシウスの鎧について知らなかった。だから島の崩壊の話も半信半疑だったのさ」
龍神が静かに語り始めた。
「サンテリア彗星島は我が作った。もちろん村人も。彦根に我は敗れ、遺跡の封印は解かれた。遺跡は我が身体の一部。今、再封印をするための力も失われつつある。しかし、ルシウス、お前なら再封印が可能だ。お前は『世界の鍵』なのだから」
ルシウスは意を決し、尋ねた。
「世界の鍵……それが夢幻の月が僕を狙う理由か? ……いいさ。どうすればいい?」
「我にお前の気力を少し分けてくれれば、それでよい」
「好きにしてくれ」
ルシウスの身体が光を帯びたかと思うと、次の瞬間、彼は膝をつき、かすかな揺れの後、静寂が訪れた。
「感謝する、ルシウス。お前のおかげでサンテリア彗星島は救われた」
ルシウスは一瞬迷いを見せたが、意を決して龍神に頼んだ。
「龍神様、僕たちに稽古をつけてくれないか? あの彦根に歯が立たなかった。あんたは彦根に傷をつけられたんだから、俺たちにも何かできるはずだ」
「よかろう。心ゆくまで修練に付き合おう」
リリーと阿座丸は顔を見合わせ、嬉しそうに頷いた。
修行初日、龍神は虹色に輝く鱗をまとい、三人の前で厳かに語り始めた。
「お前たちに、魔法のカード『マジックカード』を習得させる」
阿座丸が質問した。
「まじっくかーどとは一体どういうものなのでござるか?」
「マジックカードとは、この星のエネルギーを吸収し、心を具現化して相手にぶつける奥義だ。ただし、これを習得するには異世界人の血が必要だが……お前たちは問題ない」
ルシウスも興味津々で尋ねた。
「星のエネルギーとは何だ? それに、異世界人とは?」
「星のエネルギーとは、自然界に宿る力のこと。かつて人々はそれを敬っていたが、次第に操りたいと願うようになり、降臨の儀式を編み出した。その儀式は幾人かの命を代償に異世界人を召喚し、彼らの力で自然を支配するものだったが、非人道的として禁じられ、異世界人の血縁だけが残った。血を受け継ぐ者だけが、エネルギーを吸収しマジックカードを使える」
龍神の言葉に三人は神妙な顔つきで頷いた。こうして三人の修行が始まった。
1か月目、訓練の最初は滝行だった。
「さささ……寒い」
「拙者、この程度……寒くないでござる!」
阿座丸は震えながら強がっている。
「阿座丸、その顔じゃ説得力ないよ」とリリーが突っ込む。
続けて走り込み、滝に打たれる日々が続いた。
2か月目、星のエネルギーを取り込む訓練が始まった。ルシウスが龍神に尋ねる。
「具体的にはどうすれば?」
「手を合わせ祈り、自然と一体になるのだ。だが気をつけよ、誤れば身体が破裂するぞ」
緊張に包まれる三人だったが、龍神が急に叫んだ。
「やめい!」
驚いて修行を中断する三人に、龍神は阿座丸を見て静かに告げた。
「今、お前の心が揺れていた。このまま続けていれば身体は破裂していただろう。星のエネルギーを取り込むにはリラックスが重要だ」
「申し訳ない、続けてくれ」
3か月後、修行の最終日が訪れた。龍神は厳かに語った。
「よく耐え抜いた。だがこれからの戦いはさらに過酷を極める」
ルシウスは深く頷き、リリーと阿座丸もそれぞれ決意を胸に感謝を述べた。龍神は最後に虹色の光で地面に印を刻んだ。
「これは我からの祝福だ。お前たちが進むべき道を照らすだろう。夢幻の月に立ち向かい、必ずや勝利を掴め」
こうして修行を終えた三人は、さらなる冒険へと旅立つ準備を整えた。
ユートピア @09053805858
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