自閉症で空気が読めない利己的女子が、利他的エンパス女子に惹かれていく話。
柊准(ひいらぎ じゅん)
第1話 自閉症児とエンパス少女の出会い
財閥の重鎮の子女が通う、有名私立高校である夢ヶ原女子高等学校。そこに通う自閉症スペクトラムを患っている奥菜朱里。しかし朱里はIQが160のギフテッドであった。空間把握能力や記憶力が卓越していた。
「ねえ、あの子」
「ああ、あれだよね。“ガイジ”」
周囲から空気が読めない。人の気持ちが考えられないとして疎まれていた。
それでもそんなこと気にしていない豪胆さで通学しているのが、朱里だ。
たとえ障害児と侮蔑されようが構わないと、本気で信じていた。
唯我独尊。彼女を表すのにぴったりな言葉がそれだ。
そして筆舌しがたいほどの天才な彼女はASD のほかに合併症はなく、俗に言う「アスペルガー症候群」とも定義付けられる。
校門を潜り、それから朱里は目を上げた。校章が建物の上層部に付けられている。その校章は三角のマークに、下二点に星、上部に十字架が掲げられている。意味は、この学校の歴史に由来する。昔、貴族も通っていたころがあったそうだ。その際に聖カトリック教を信奉していた学長が貴族の学生に説いたことから、この校章が用いられるようになった。
朱里はイエスの伝説や加護というものを、胸の内で信じているほどで。だからこの校章が好きだった。
クラスに入ると、なにやらざわめいているのが、他の生徒にあまり興味がない朱里にも分かった。こっそり耳をたてると、このクラスに転入生がやってくるそうだ。まあ、だから何だと思った。
担任の葛城岬先生が出席簿を持ってやってきた。
「みんな、席に座って!」
朱里は席に座り、怠惰な雰囲気を醸し出しながら頬杖を付いた。
「今日は転入生を紹介します」
その号令と共に猫背な女子が教室に入ってきて、か細い声で言った。よろしくお願いします、と。
その女子生徒は、美人という言葉を辞書で開けば名前が出てくる、というようなほどの美女だった。可愛さのなかにも大人っぽい色気がある。
そこまで考えて朱里は頭を振った。自分は何を考えているんだ。
でも、友達にはなってみたい。そう、この学校で初めて思った。
自閉症で空気が読めない利己的女子が、利他的エンパス女子に惹かれていく話。 柊准(ひいらぎ じゅん) @ootaki0615
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