おわり 蛇足

 人は子供から大人になるにつれ、どうでもいいことから重要なことまで沢山のことを知る。

 重要なことは例えば、自炊の仕方とか家計簿つけることとか法律とか、あと引っ越しが多い理由が親の仕事が理由だからとか。


・・・・・


 あれから四捨五入で十年。僕は法学部に入り法律家を目指している。上手くいけば儲かるかもしれないからが理由だ。しかし試験は熾烈を極めるもので、あまり受かる気はしていない。

 僕が大学に入る段階で転勤族の親からは実質的に独立している。マメに連絡は取っているが。

 その連絡に『勉強ばかりしてるだろうけど、たまには旅行とか息抜きしなさい』と両親連名の手紙と、お小遣いが入っていた。

 試験が大変だと知ってるのだろうかと疑ったが、確かに勉強ばかりしていた気がしたので旅行にでも行くことにした。

 しかし、行きたいところがないので決まるまでタンス預金にすることにした。


・・・・・


 それから幾月、授業の小話で性的少数者の法的人権というテーマが出た。


「────……っ」


 僕は教室を出ていった。

 キャンパスを駆け抜け、バス停まで向かう、早くバスが来ないかとイラつき数分、やっと来たバスで家の最寄りにて降りる、再び家まで駆け、家に幾月間も放置していた預金を取り出す。そして向かう。

 性別なんて関係ないだろうに。

 忘れてた。けれど今なら鮮明に思い出せる。


 あの庭を。

 あの花を。

 あの子のことを。


・・・・・


 何もなかった。

 厳密には更地となっていた。


 馬鹿だな、と。

 乾いた笑いが止まらなかった。

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花に水をやるキミ 詩森右京 @Utamori_Ukyo

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