歌の幅が広がったのは、30代から?
高校生の頃、カラオケは私にとって「特別な場所」でした。学校が終わってから友人と一緒に行ったり、休日の午後に一人で歌いに行ったり。いつも心のどこかにあるモヤモヤや、日々の小さな悩みを吐き出す場として、カラオケは私に寄り添ってくれていたんです。ですが当時は、歌える曲も限られていて、特定の数曲を毎回同じように歌っているだけ。自分が苦手な音域やリズムにぶつかると、うまく歌えないことが悔しくて、諦めることも多かったですね。カラオケは楽しい場所でありながらも、ちょっとした壁を感じることもありました。
そんな私が30代になり、再びカラオケに行った時、驚きの瞬間が訪れました。昔は無理だった曲や、歌おうとすら思わなかった難しいメロディが「なんだか歌える?」と、ふと思うようになったんです。いつの間にか、昔の自分が投げ出していたような曲に対して、自然と声が出せるようになっていました。これは自分でも意外で、感動すら覚えました。
カラオケの楽しみが、年齢と共に変わってきたのは確かです。若い頃は「歌う」という行為そのものを楽しんでいましたが、30代になってからは「歌い上げる喜び」や「挑戦する楽しさ」に重きを置くようになりました。難しかった曲が歌えるようになったことに気づくと、昔は届かなかった音域やリズムを克服したような気がして、自分の成長を感じられるようになったんです。
とはいえ、変わらない部分もあります。それが「機種」と「原曲キー」に対するこだわりです。昔から通い続けているカラオケ機種には、自分にとって歌いやすい設定が整っていて、何度も足を運ぶうちに、ある種の「安心感」を覚えるようになりました。カラオケ機種の設定や音質は微妙に違っていて、別の機種だと音が少し違う、リズムがなんとなく違和感がある、と感じることも少なくありません。さらに、原曲キーでないと歌えない曲も多いため、自然と「自分に合う機種」で歌うことが一番楽しいと気づいたんです。
たとえば、ある日のことです。いつも行くカラオケボックスがメンテナンス中で、仕方なく違う店に行った際、自分が愛用している機種と違うものだったんですね。いざ歌い始めてみると、音が違う、リズムが合わない、歌い慣れたはずの曲がうまく歌えないと感じてしまいました。そんな中、もう一度、自分に合った機種で歌う場所に戻ったときに、何ともいえない「帰ってきた」という安心感を覚えました。この出来事を通じて、自分の「こだわり」を再確認したように思います。
月に一度、一人でカラオケに行くことは、私の中で大切なルーティーンです。その日が近づくと、「今回は何を歌おうかな」「久しぶりにあの曲にも挑戦してみよう」とワクワクします。一人だからこそ、自分のペースで、好きなだけ歌うことができる。その時間が、心を解放してくれる特別なひとときになっているんです。
最近は、懐かしい曲だけでなく、少しずつ新しい曲にも挑戦しています。普段はあまり歌わないジャンルや、ちょっと背伸びしてみたくなるような歌も歌うようになりました。もちろん、すべてがうまくいくわけではありませんし、時には「あれ?やっぱりまだ無理かも」と感じることもあります。でも、その挑戦自体が楽しいと思えるようになりました。
こうしてカラオケを通じて感じる「成長」や「変わらないこだわり」は、私の生活の一部であり、人生の一部です。30代で気づいた歌の幅の広がりは、単に音域が広がったとか、歌うスキルが向上したというだけでなく、何か新しい自分を見つけるきっかけにもなりました。これからも、私なりのカラオケの楽しみ方で、自分の心を癒しながら、新しい発見をしていきたいと思っています。
カラオケは、私にとっての「自由な空間」であり、自分自身を再確認する場所。そして、これからもきっと、私の歌の幅は少しずつ広がっていくのでしょう。
カラオケに対する私の意識 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
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