ミーティア戦記~退役したい軍人と上を目指す軍人の戦い~
にゃんたろう
ミーティア戦記
二世紀もの間続くユーズ惑星同盟とサイラス星系国家連合との宇宙二国間戦争。
ここ最近は惑星同盟が若干優勢で戦争が続いている。前皇帝が崩御し、政治に乱れが出た星系国家連合に 侵攻するため、惑星同盟にてイリュウシャン回廊への一大侵攻作戦が決定された。
俺こと優輝・E・伊達はこの度、少尉に昇進。十八歳の時に臨時徴兵され軍に入り、何度も死線を潜り抜け気づけば二十四歳。多くの仲間と知り合い、そして別れを経験してきた。
そんな俺が運良く少尉まで昇進。どれだけ過酷な戦場を生き抜いてきたか察してほしい。
しかし、叩き上げで士官学校を出ていない俺は、少尉で頭打ち。これ以上、上に行くには通信士官学校を受験、合格し、二年間勉強して単位を取り卒業しなければならない。明日、押っ死んでもおかしくない俺に、そんな余裕があるか! 一日、生き延びるだけ精一杯だよ!
だが、それもこれまでだ。少尉になれたことで、軍属年金がもらえることになった。なので、今回の作戦終了後に退役を決めている。
そんな少尉に上がった俺に、
だけど、
せっかくの新型だが使わずに退役だろう。運良く生き残ったら、データ取りくらいは手伝ってから退役しよう。
本音は、この作戦に参加したくない。この作戦が決まってからずっと、胸がざわついている。こんな経験初めてだ。退役を決めたからだろうか? 生き残るということに、プレッシャーを感じているのかもしれない。
作戦が開始され、作戦星海域到達まで乗艦している空母蒼龍でミーテイングが何度も行われる、そして、決戦前の最終のブリーフィングが行われる。
俺の乗る蒼龍、ほか焔龍、吹龍 殻龍の空母は戦艦大門を旗艦とした、少数精鋭の艦隊での作戦となる。
我が同盟の主力艦隊がイリュウシャン回廊で敵連合の主力艦隊を引き付けている間に、敵主要基地へ電撃作戦を決行し無力化するのが任務。
この主要基地を落としイリュウシャン回廊を我が同盟が奪うことができれば、連合の領域に牙を突きつけることができるようになる。
少数精鋭艦隊での攻撃になるので、如何に主力艦隊が相手を引き付けるかで難易度が変わってくる。高々、一兵士の俺にできることなどない。我が軍の情報部を信用するしかない。
そして、主力艦隊がイリュウシャン回廊で戦端が開かれたと報告が入る。この報告をもって、我が艦隊が移動を始め作戦開始となる。
今回、我々が狙う主要基地はイリュウシャン回廊の前線基地ではなく、回廊入り口から少し奥の回廊が狭く大艦隊での進撃ができない場所にある、この回廊に栓をする役目を担う基地。普段なら二個艦隊が駐留している基地だ。
今はその二個艦隊が出撃していて、少数の防衛艦隊しかいないはずになっている。
この基地、防衛力が高く長年侵攻されていなかったため、油断していると作戦本部が判断し作戦立案決行された。
既に俺は
しかし、ここで
『どうやら、我が軍の作戦は連合に洩れていたようだ。一個艦隊にこの艦隊を捕捉されている。しかし、統合本部より作戦を遂行せよと指示が下った』
おいおい、どうなってるのよ。援軍でも寄こして敵の艦隊を叩くってか? 戦力的、時間的に無理だろう!
『これより、我が艦隊は作戦を変更し、強襲揚陸艦を守りつつ、敵艦隊を突破する。一艦でも守り切り、敵基地まで強襲揚陸艦を送れば我が同盟の勝利! 我らが栄光なる同盟のために! 出撃!』
おいおいおいおい! 俺たちに死ねってか?
確かに強襲揚陸艦に新型の
しかしだ! この少数艦隊五十隻で、どうやって連合の一個艦隊五百隻を突破できるなんて考えるんだよ!
頭おかしいんじゃねぇの!
前方のシールド艦が前面のシールドにエネルギーを集中させ、突撃が開始される。艦砲射撃も始まり、もう何が起きているのかわけわからん状態。
大きな振動が何度も起こる。出撃する前にお陀仏もあり得る。敵艦隊に接近したのだろう。
そして、この艦隊の道を切り開くために、空母から汎用戦術戦闘機ヴァーチャーが飛び出していく。
そして無情に、TSSにも出撃命令が下った……。
「ナイトメアリーダー優輝・E・伊達少尉、出るぞ」
俺の後に三鑑のTSSが続く。
「ナイトメアリーダーから各機へ。我々の任務は強襲揚陸艦天風を連合のイーマから守ることだ。死守しろとは言わん。できるだけ守れ。そして、生き延びろ。以上だ」
『ナイトメアワン、了解。死ぬ気は毛頭ありません』
『ナイトメアツー、了解。終わったら、酒奢ってください』
『ナイトメアスリー、了解。じゃあ、俺は女紹介してください!』
ナイトメアワンのデルクは、ここ一年俺の副官をやっている。腕は確かだし、人当たりも良く頼れる副官だ。ほかの二人は最近、部下に配属されたお調子者だが、それなりの腕を持っている。
死ぬなよ。
突破を図ろうとする我が艦隊だが背後に防衛力の高い基地があることで、連合艦隊のほうが余裕があり押し込めないでいる。
中心部後方に位置する強襲揚陸艦天風に接近。いつもの狙撃装備のTR-2でTSSから出る。
「ハルファス空間でギリギリでいいから俺を追尾し、データを送れ。間違っても落とされるなよ。俺の帰る場所がなくなるんだからな」
『善処します』
俺の指示を受けTSSがハルファス空間に消えていく。
ハルファス空間は流動体に満たされた空間で、いかなる推進力でも一定の速度しか出せない空間。目に見えなくなるが、ハルファス空間レーダーがあり、特殊弾頭を使うと普通に攻撃できるので万能空間ではない。それでも、撃破され難いことには変わりがない。
敵のイーマや敵戦闘機が徐々に現れ始めた。強襲揚陸艦の傍で狙撃を開始。敵戦闘機を落としていく。近くで守っていた駆逐艦が敵イーマ部隊に落とされるのが見えた。
敵のエース部隊が来ているようだ。勘弁してほしい。
駆逐艦が前を、全機放出しお役御免となった空母四隻が強襲揚陸艦六隻の両脇を固め盾となり、無理やり道を開くため特攻をかける。となると、我々ナイトメア隊も追従するしかない。
最後のご奉公だ。やるしかないな。
駆逐艦と空母、強襲揚陸艦の護衛に回る。後方に補給艦と工作艦がついて来ているが、可哀そうだが無視するしかない。
いたるところから砲撃が襲ってくる。駆逐艦と空母が強襲揚陸艦を守るため被弾していく。
敵エース部隊もやってきた。一機だけほかとは動きの違う緑と赤のパーソナルカラーの機体が、味方イーマ、ヴァーチャーを蹴散らし俺が護衛する強襲揚陸艦に迫る。
ああ、面倒くせぇ。こいつがエースだな。
年金暮らしがすぐそこだってのに、最後の最後にババを引いたな……。
「ナイトメアリーダーから各機へ。敵エース部隊がご到着だ。チームリーダーをナイトメアワンに移譲。このまま天風の護衛に付け。俺がダンスパートナになってやるよ!」
『ナイトメアワン、了解。ご武運を……』
『ナイトメアツー、了解。ちゃんと酒奢ってくださいよ!』
『ナイトメアスリー、了解。隊長、漢だ……』
敵はスリーマンセルでの攻撃。また、味方機が落とされた。エース以外も腕が良い。チッ、分が悪いぜ。
敵エース機にロングライフルの照準を合わせトリガー二度を引く。一発目は囮だ。二条のビームがエース機を襲うが、ビームの軌道がわかっていたかのような回避。掠りもしない。
化け物相手に俺で勝てるか? 高難易度ミッションかよ。
まれに、生まれ持って超能力を持った奴がいる。漫画や映画のような派手な能力ではないが、ちょっとした感の良さ、ほんの少しの予知。そんなちょっとした能力が生存率を上げることになる。厄介な相手だぜ……。
だが、避けられるのは想定済み。本当の狙いはその後ろにいた敵エースの僚機二機。そのうち一機の右肩とヘッド部分をビームが貫く。仕留めることは出来なかったが、戦線離脱は間違いない。
もう一度いけるか? 敵エース機の動きが早い。ロングライフルを機体の背中に装着して、ビームマシンガンに持ち替える。
狙撃はもう無理。ガチンコ勝負だ!
ビーム弾をばら撒き敵エース機に迫る。
エース機は機体を右側に回転して躱す。目標を見たままで相手の攻撃を躱す、
追従する僚機はビームシールドで防ぎながらライフルで攻撃してくる。腕は悪くないが未熟だな。それに比べ、あのエース機の動き、シャレにならんな……。
しかしなぜ、攻撃してこない? 敵エース機の装備をTSSからの情報で確認。どうやら、実弾のバズーカを二丁装備している。艦艇に対しては効果的だが、高機動のイーマには当てることは至難の業の武器。
ビーム兵器は貫通するだけ弾薬にでも当たらなければ爆発はしない。実弾系は速度は遅いが火薬を搭載している分、当たれば爆発炎上する。
エース機は艦艇狙い。こちらの弾切れまで回避に専念するきか? それだけ、回避に絶大なる自信があるってこと⁉
代わりに、僚機が俺を倒すってことか。エース機を守るため、喰らいついてくる気概は認めよう。だが、あの一機だけなら俺の相手にはならない。
ならないのだが、あの僚機を相手にしてこちらが弾切れになれば、味方艦艇が危険にさらされる。それは本末転倒。これだけの混戦だとTSSで補給もままならない。
僚機をさっさと始末しないと、エース機のバズーガが火を噴き、やはり味方艦艇が危険に晒される。やってられないないな。ほんとによぉ!
エース機をけん制しつつ、僚機を潰す。というのは、正真正銘の命懸け。イーマの足に内臓されているヒートダガーを抜きエース機に接近戦を挑む。取りあえず、味方艦艇に近付けさせなければいい。
ダガーでエース機を攻撃しつつ、マシンガンで敵僚機を狙う。敵僚機は、俺がエース機と肉薄しているせいで攻撃に躊躇がみられる。まだまだ甘い。こちらの思うつぼだ。エース機との腕の差がはっきりと出ている。
エース機に再度接近戦を挑むと見せかけ、エース機を中心にバレル・ロール(*1)を仕掛け、やり返してやる。敵僚機が気づいた時には俺と僚機の間に壁となっていたエース機はいない。
俺がマシンガンを放ち、相手はシールドを張るがシールドが耐え切れず全身に被弾。そして爆散。
さあ、これでタイマン勝負だぜ。エースさんよ!
☆
現下、我が陣営のサイラス星系国家連合はユーズ惑星同盟に劣勢に立たされている。
既得権益階層の馬鹿貴族どもは、この状況に浮き足立ち統制が取れていない。父や兄も同類。ウジ虫どもめ!
いつの日にか、この私ユリアスがすべて粛清して見せよう!
そんな矢先に、同盟が我が連合の防衛ラインの一角である、イリュウシャン回廊侵攻作戦が発布されたことを情報局が掴んだ。
イリュウシャン回廊を抜かれれば連合主要星系は目と鼻の先。ここを取られれば、連合は喉元にナイフを突きつけられたも同然。
軍はその策を逆手に取るべく動き出し、連合本部と軍上層部により『連合の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ』と号令を発している。
思うところはあれど、我は軍人。粛々と任務を遂行するまで。
古参のガイス、今回補充された新兵のイルマ。ガイスは曹長で二年の付き合いになる。腕は確かだ。イルマは士官候補生の准尉官。腕はいいが、まだまだ新人。
イーマは適正必須の起動装甲歩兵。操縦者を育てるのは時間がかかる。敗戦が続きイーマ搭乗兵が減ったことにより、動かせるのであれば候補生の新人でも使わなければならないほど追い詰められているというべきか。
司令部では意見が割れたようだ。イリュウシャン回廊基地防衛を捨て全軍で敵主力艦隊に対するべきという艦隊決戦派の軍上層部と、基地を拠点とし回廊の防衛を第一目標にする主防衛派の連合本部。
軍人としての私見としては戦力の分散は愚の骨頂。基地などくれてやればいい。主力艦隊を叩いた後に奪い返せばいいだけのこと。
だが、連合本部は基地を奪われた後の再建費用を懸念。まずは勝たねばならぬというのに……。
今回我々の部隊は基地防衛任務に就く。主力艦隊がイリュウシャン回廊で戦端が開かれたと報告の後、この基地に艦隊が迫っていると報告が入る。策が洩れたことに気づいておらぬようだ。
情報によれば空母を主力とした強襲部隊。戦力はこちらの圧倒的有利。基地の援護、補給もある。その分、味方主力艦隊に負担がかかっているであろう。
敵は特攻をかけ強襲揚陸艦での基地制圧を狙っているようだが、近寄せるわけにはいかん。我が部隊も出撃。敵艦艇を落とすことを主作戦とし、私のイーマを艦艇破壊装備に換装。部下二人には私の護衛とする旨を伝える。
「クリムゾンバード隊、出撃」
『『ハッ!』』
実弾での攻撃になるのでHit and Awayとなる。TSSは情報収集、戦術バックアップ、実弾補給用に一機のみ出撃。
突出してきた駆逐艦に狙いを定め攻撃。敵イーマが護衛についているが、ガイスとイルマが道を開き機関部にバズーカを撃ち込む。炎上爆破、次を狙う。
敵駆逐艦が強襲揚陸艦をガードしながらの特攻ともいえる攻撃に移る。向こうも苦しいのだろう。
だが、やらせはせん!
次の獲物の駆逐艦近くにいる敵イーマが、こちらを狙っているのを感じる。ロングレンジライフルでの狙撃か?
敵イーマは微妙にずらした二射を放つ。こちらが躱すことを念頭に置いた正確な射撃だが、それ故躱しやすいうえに私には視えている。当たらなければどうということはない。
が、味方機被弾のアラームが鳴り響く。何が起きた⁉ ガイスの機体が被弾し右肩と頭部をやられ戦線離脱を余儀なくされる。命に別状はないのが幸いだ。
TSSに何があったが問い質せば、敵イーマが狙撃した際、その弾道上に私の機体とガウスの機体が重なっている。私の機体が死角となりガウスが被弾した。
狙たのか!? だが、敵イーマはどう見てもエース機には見えない、見えないどころか量産機それも旧型だ。それだけの腕を持つパイロットが乗る機体ではない。やはり偶然か?
『も、申し訳ありません。ユリアス様……』
「命に別状がなければよい。TSSに入りサポートを頼む」
『承知しました』
ガイスが離脱したことで厳しくなったな。この場はイルマ一人では荷が重い。一度引くか? いや、強襲揚陸艦だけはなんとしても落とさねばならぬ。イルマ、すまぬ。お前の命、私に預けてくれ!
狙撃してきたイーマはロングレンジライフルを背中に仕舞い、マシンガンに持ち替え迫る。イルマが前に出て私を守るが、相手のばら撒くビーム弾に苦戦している。
相手の狙いは私だ。イルマをマシンガンでけん制しつつ、接近戦に持ち込みダガーでの攻撃。ここでバズーカを捨てるわけにはいかん。両手にバズーカを持つのでシールドでのガードもできず、持てる技量のすべてを駆使して避ける。
視えているにも拘わらず、この私が押されている? 旧型の量産機でよくやる! チッ、なによりしつこい。これでは敵艦に近寄れん!
間合いを取るが敵イーマが離されまいと突貫。狙いは私か? イルマは私がいることに躊躇して攻撃できていない。ガイスならば躊躇なく撃っていただろう。経験の差が出ている。敵イーマは、私の隙を伺うように対峙した状態から、突如トルネードのように回転。
くっ、またしても狙いは僚機か!?
完全にイルマの不意を突かれた。奴のマシンガンが火を噴く。イルマが咄嗟にシールドを展開するが、ビーム弾の嵐にシールドが耐え切れず機体が蜂の巣に。
『お、お母さ……』
機体は耐え切れずに爆散。
クツ、若い命が散っていく……すまぬ。
「貴様ー! 許さん!」
☆
エース機との追いかけっこが続いている。よくまあ、これだけ躱し続けるもんだ。
うちの艦隊は見るも無残にボロボロ、半分も残っていない。戦場墓地の慰霊碑にどれだけの名が連なることか……。
敵エース機も腹を括ったな。お互いここが正念場。パーティー会場でダンスを踊るが如く、シャンデル、シザーズ、ハイ・ヨー・ヨー(*2)、先に逝った先輩方から盗んだ技たち、そして持てる力すべてを出し躱し、接近、追撃を繰り返す。
「チッ、ここでインメルマンターンかよ! 」
機体同士が向き合い、お互いの距離はほんのわずか。敵イーマの両手にあるバズーカから弾頭が放たれる。
「この至近距離で撃つか⁉」
TSSから二種類の警報が鳴る。自機被弾警告と後方にいる強襲揚陸艦の被弾警告。
やられた!? 今度は俺が罠に嵌った!
咄嗟にイーマの左腕をパージ。片方の弾頭にぶつかり爆発。敵エース機と自機が爆発に巻き込まれ吹き飛ばされる。
チッ、もう片方はそっちでなんとかしてくれ!
回転している機体をなんとか姿勢制御し周囲を確認。逃した弾頭は飛び出してきた空母蒼龍が身を挺して強襲揚陸艦を守り被弾し中破。こいつも、もう死に体だな。
だが、味方の犠牲もあり、強襲揚陸艦は敵基地を射程に捉え新型EMP弾で攻撃を開始。おそらく勝ちは決まった。
が、エース機は空母蒼龍に止めを刺ささんとバーズカを放とうとしている。こちらに背をむけているので、こちらに気づいていない。最大速力で捨て身のタックル。さっきの爆発でマシンガンが破損して撃てなくなった。
タックルが決まると思ったのは一瞬。ここで超反射というべき動きを見せエース機が機体を反転。至近距離でバズーカが火を噴く。
化け物が! あー、俺死んだ……。
☆
くっ、しつこい! エースでもない量産機の奴にここまで粘られるとは! 己が不甲斐ない!
いや、そうではないな。こいつはエースだ。たとえ、今まではエースと呼ばれていなくとも、この私を追い詰めんとしているのだ。認めよう。貴様はエースだ! だが、最後に勝つのはこの私だ!
味方が押され始めた。無謀との思える特攻攻撃が功を奏し、包囲網を突破されつつある。だが、まだだ! やらせはせんよ!
私の技術、能力を持てしてもこの量産機を振り切れん。なれば、先にこいつを落とす!
無作為に見せて縦横無韻に飛び回り、奴の位置感覚を狂わす。奴は必死に離されまいと喰らいついてくる。今、己がどこのにいるか気づいていまい。
さらに大げさなターンをし注意を引く。
かかった! もらたぁぁぁ!
手が届きそうなほどの目の前に、奴の機体がある。左右のバズーカのトリガーを引く。
なにっ!?
奴は自分の後ろに艦がいることに気づき、避けられないと悟ると左腕をパージし、左腕を犠牲にして誘爆を狙ってきた。何たる判断力、何たる行動力、何たる反射力。そうか、奴も
片方は防がれたが、もう片方は敵艦に向かう。が、近くにいた空母が身を挺して強襲揚陸艦を守り被弾。中破に至りながらもまだ味方艦を守ろうとするその意志。敵ながら見事!
強襲揚陸艦の攻撃により基地からの通信が途絶えた……。どうやら、我々の負けのようだな。だが、これも戦争の定め。止めを刺させてもらおう。
「――ッ⁉」
くっ、本当にしつこい。満身創痍の機体でまだやるか! ならば、先に引導を渡してやろう!
さらば、姿見ぬ、
☆
頭に響く煩いほどのアラームが鳴っている。
「俺、生きているのか?」
外部モニターが破損し状況がわからない。機体チェックを行えば生きているのが不思議なほどボロボロ。TSSを呼び出し回収させ、用心のためすぐに潜航。
TSSのコックピットに移動し状況確認。周りには味方も敵の存在も皆無。どうなっている?
現在位置をTSSに問えば不明と回答。近場に宙継ビーコンがないだと!? どんだけ田舎だよ!
いやいや、そうじゃない。どうしてそんな辺鄙な場所にいる? イリュウシャン回廊での戦闘はどうなった?
TSSにあの戦闘記録とその後の状況を確認。
あのエース機の攻撃を俺がシールドを全開にし、TSSが遠隔で被弾面を斜めにずらしたおかげで機体は大破したもののコックピットは守られたようだ。
が、同時に近くにいた空母蒼龍の爆発に俺やほかの艦艇が巻き込まれた模様。TSSが解析したところ空母蒼龍が爆発した時に、一瞬時空の歪が現れ周囲がその歪みに飲も込まれた可能性があると提示。
なら、爆発した空母蒼龍の残骸はどこだ? 俺の近くに敵のエース機もいたはずだ。TSSは不明と回答。
よしんば、時空の歪に飲まれ、どこかに飛ばされたのはいい。助かったんだから御の字だ。だがここはどこだ? 救難信号を出して助けに来てくれるのか? 宙継ビーコンがないということは、人類生息宙域の外ってことじゃないのか?
そうだ、この宙域の天体の位置で居場所を出せないのか?
『データ参照・・・該当なし。我が軍による救難活動は困難と判断』
な、なんだとぉ!?
ま、まじかよ…。
TSSがあれば数か月は生き延びられる。じゃあ、その後は? な、なんたる、高難度ミッションからの高難度ミッション……。
「じ、人類居住可能惑星を探せ!」
『解析中・・・第一級居住惑星を発見。直近の惑星が該当』
目の前に水を湛えた惑星があった。目の前かい!?
「よし、地上に降りるぞ!」
『大気圏突入シーケンス起動・・・十分後に大気圏突入開始。地表観測により人工構造物を確認。目標位置に設定』
ちょ、ちょっと待ったー!
「目標位置変更。人工構造物から離れた居住可能と思われる無人島を探せ。そこを、目標地点とする」
『前目標構造物より西に二百キロ洋上に該当地発見。目標位置に再設定。突入軌道修正。五分後に大気圏突入開始』
無事に降り立った無人島は大きな大陸の西側。さらに、西に中位の大陸がある。これは航路上にある島かもしれない。
なぜ、そう思ったか?
大気圏を抜け目的の島に降りるとき、TSSが高感度望遠カメラでとあるものを確認していた。それは、帆船と空飛ぶ飛行物体を発見していたからだ。
帆船はいいとして飛行機? 飛行船? 飛空艇か? ということは、船が帆船というのが気になるが、そこまで文明レベルは低くないということだな。
あぁ、失敗した。降りる前に惑星全体を把握しとけばよかった……。だいぶテンパっていたからな。もっと人目に付かない場所を指定するんだった。
島に降り立ち海を眺める。
さて、これからどーすっかなぁ。
(*1)バレル・ロール 敵の銃撃などをかわすために、進行方向 を変えずに横に1回転すること。相手の背後を取りやすくなる機動。
(*2)
シャンデル 水平飛行中から45度バンクし、そのまま斜めに上方宙返りし速度を高度に変える。開始時と終了時で方位が180度変わり、速度が減少する代わりに高度が上がる機動。
シザーズ 二機が並行に飛行しながら急旋回による蛇行を行った結果、双方の飛行軌跡が交錯している状態を指す機動。
ハイ・ヨー・ヨー 目標機を追う際に自機の速度が優速である場合に余った速度を上昇することで高度に変換し一旦速度を落とし、そこから降下することで再び速度を得ながら追随する機動。
(*3)インメルマンターン 水平状態からそのまま機首を上げ上昇、背面状態になった時点でロール(横転)し水平飛行に戻る機動。
猫(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ(ΦωΦ) Ψ猫
カクヨムコン用ではなくロボットものとして温めていたものにゃ。
ここから、主人公二人のファンタジーロボットものになる予定でしたにゃ。
機会があれば連載したいですにゃ。
よかったら、お星さま🌟をポチっとしてくれると嬉しいですにゃ。
ミーティア戦記~退役したい軍人と上を目指す軍人の戦い~ にゃんたろう @nyantarou
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