神の旅 🛫

上月くるを

神の旅 🛫



どこまでも空の深まる十一月

校庭に埋まるタイヤや冬来る


空港は駅から遠し神の旅

立冬や帰化申請の万国旗


大寺の厨の生計ねぎを剥く

裏庭に如雨露と鍬の冬菜畑


生き物の生きる星なり石蕗の花

冬すみれ鉢の棲み処に日の恵み


肥えさせて売る鴨どちや霧の池

もの置きの雨樋の錆やぶかうじ


鴛鴦の沓ふたつながらにさりながら

をしどりを浮かせる湖のあをさかな


草枯れて古墳ひとつを残しけり

かきくけこ枯葉の溜る風だまり


天竜の中洲の蘆も枯れにけり

大夜空かぶさりきたり星の鴨


ぱらと来てすぐにやみたる初時雨

河豚刺に古伊万里の鳥羽ばたけり


かすれ星六つかさねて昴たり

冬の月一語さがして二夜三夜




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