第二章 交錯する刃

第24話 荒野①

荒野に鼻唄。


「あ、チョウチョだ」


止まり木めがけて、狙いを定めてジャンプ。

よくもまぁ、体力があるものだ。

同じ量の荷を背負っているはずなのに。

鞄は同じに見えても女性の方が中身が軽いのだろうか。


「元気すぎない?フィロ」

「ん?そう?」


この暑さも平気そうだ。


「もういっしゅうかんだよねー、次のまちはいつ?」

「もう少し先かな。この荒野を抜けると今は使われてない街があるみたいだから、まずはそこを目指そう」

「それまちなの?」

「厳密には違う。要するに廃街だね。目印にはなるよ。そこを抜けたら、次の街まではそう遠くない」


地図をまじまじと見ている。


「街をいくつか過ぎたら、その後は大きな都市があるらしいから、一緒にいられるのはそこまでにしよう」


地図をクシャっとするフィロ。


「いーや、ずぅとたびするの」


毎回こうだ。

この話をしようとすると、断られてしまう。


「ふぅ、ほら地図返してよ」


紙はクシャッとなったまま。

声をかけたフィロはというと、一点を見つめていた。


「あそこ、くもがもくもくたってる」

「……ああ煙か、誰かいるのかな」


地面が少し高くなった場所で煙が立っている。

同じ類の旅人かもしれない。


「あ、ちょっと待ってよフィロ」


追いかけた先、煙の場所には誰もいなかった。


「いないね」

「荷は少しばかりあるから、食糧探しとかに行ってるのかもね」

「ふーん」

「あ、こらフィロ、そこゴソゴソしない」


目を離すとすぐこれだ。

3日前も同様な光景があった。

あの時は、1人用の荷しかなかったけれど、ここには複数人の荷がある。

前とは違う人だろう。


「長居は無用だよ」


まだゴソゴソとしている手を引っ張り、高台を降りはじめる。

元来た場所に戻った時、ふと視線を感じた、そんな気がした。

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