第25話 荒野②
悩みながら歩いていると心配そうに見つめてくる。
「どうかしたの?」
「あーいや、んーとね」
歯切り悪く、曖昧な答えになってしまう。
「なんとなーくだけど、ほんとに僅かだけど視線を感じるんだよね、フィロは何か違和感ない?」
「んー、どっち」
「後ろの方」
「わかんない、おなかすいた」
感覚の鋭い獣人が気づかないということは、僕の体質が過剰反応しているということか。
「はい、パン。もうすぐ備蓄切れるから今日はもう間食はなしね」
「うん」
早いところ、廃街を通り過ぎて、次の街へ行かないといけない様子だ。
悪い予感は当てたくない。
今から早足であるけば、2時間もしないうちに廃街にはたどり着けるだろう。
「少し急ごうか」
1時間以上は歩き、上を見上げる。
暗い。
夕暮れにはまだ早い。
「もくもくだ」
雨が降りそうだ。
いや、もうすでに降っている。
水音を感じた。
大降りになる前に廃街に入って雨を凌ぎたい。
そう伝えようとすると、背筋に悪寒が走る。
何か来る、そう思って、咄嗟に頭を下げた。
耳元をこするかのように、キンキン音が響く。
それが何か伝えるよりも早く、僕は叫んだ。
「走って!フィロ!」
フィロもそれに気づいたのか、瞬時に対応する。
ここは遮蔽物がない。
急ぎ建物内に入る必要がある。
2発目が足下をかすめる。
「もう着く!」
更に2発ほど、射線を掻い潜った僕達は、目の前の塀を飛び越え、建物に入る。
雨音も大きくなる。
声を潜め、窓越しに外を見ると、1人の傭兵がそこにはいた。
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