第23話 統治者③
「俺には無理だ、そんな資格はない」
「安心するがよい。推薦には何も効力はない。特に、権利を自分から無くした者からはな。結局のところ、投票じゃよ」
「しかし、投票となると…」
「そう、拒否権はない」
話が終わり、立候補となるものがいないか確認をとっていた。
ジモンさんは、探鉱の人達の後押しもあり、渋々了承。
最終的に、グンジさんの息子も合わせて、4人の中から選抜されることになった。
投票結果はというと、ジモンさんの圧勝。
僕の推薦は必要なかったらしい。
歓声や拍手が贈られている。
以前は不遇な失脚となったが、今回は頑張ってほしいという意見が多かった。
街の中での継承の儀。
王冠は頭に被る物ではあるが、ここはもう国ではないため、冠は戴くだけ。
王は居らずとも、統治者はいる。
王よりも、偉大な存在かもしれない、この街に於いては特に。
その日は、日が暮れても街に明るい声が響いていた。
あれから数日が経った。
僕は、いそいそと身支度をしていた。
街を出るのだ。
「もう行くのか」
呼び止めたのはジモンさん。
探鉱現場ではなく、いまは街の中心部にいる。
グンジさんとの引き継ぎもできないままなので、仕事は山のようにあるのだとか。
「こういうのは、早い方がいいので」
名残惜しくなるのはいつものことだ。
経験上、長居はしないことにしている。
どちらかといえば、長く滞在した方だ。
「砂嵐、気をつけろよ」
お辞儀をして、街の反対側へと向かう。
この街に入ってきた方角とは逆側だ。
探鉱現場からも離れている。
街が、小さくなっていく。
岩肌が見え、辺りは殺風景。
外が近い証拠だろう。
「…楽しかったな」
自分以外誰も居ない空間での余韻。
壁は見えてきた。
白く長く大きい壁。
道の終着点には、たいそうな門がある。
大きいが、内側からしか開けることができない門。
この街で一番機械じみているらしい。
昔、技術者が記念に作ったのだとジモンさんが言っていたのを思い出す。
門の下には、誰かが座っていた。
それは目が合うと、勢いよく立ち上がり寄ってきた。
「なんで、ここにいるのフィロ?」
探鉱現場で別れたはずの人物だった。
フィロは首を傾げる。
「ひつようでしょ、私」
「いや、…あっ、えっと皆は?ネム達はどうするんだよ」
「ジモンさんのところで、はたらけるから」
「雇ってもらえるからといって生活は?まだ小さいんだよ」
「たんこうの皆といっしょだから大丈夫だよ」
頭を抱える。
「それに、私、ここの生まれでもないし、皆もあとおし?してくれたからここにいるの、私はひつようでしょ?」
そんな眼で見つめないでほしい。
断りづらい。
「うぅ…。じゃあ一応、次の街か、もしくは都市までね」
「やったー、ずっといっしょだね」
「いやいや違うよ」
向かい合い、話しながら、門に触れる。
感知したのか、ゆっくりと開く。
征く先には青空が広がっていた。
「こっちは、70%くらい砂嵐だって聞いていたのに」
「うわぁーすごーい」
重くゆっくりと門が閉まる。
「運いいね、私たち」
大きく息を吸い込む。
「じゃあ行こうか」
砂嵐が来る前に。
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