第21話 統治者①
定例査定当日、グンジは浮足立っていた。
自分の評価が確実に上がるという事実。
潤沢な利益も、もうまもなく、叶う。
長達との会食も盛大にする予定で、準備万端。
抜かりはない。
「グンジ様、お客様が来られました」
「おう、入れてくれ」
長達は4名。
連れたる従者は、外に待機。
いくつかの挨拶のあと、それぞれが席に着き、財政報告が行われる。
「ふむ上々ですな」
「さすがの手腕といったところ」
「お褒めいただきありがとうございます」
「あとは、今後についてか、展望はいかに」
「その前に、王冠の確認でしょう。見せて頂いても?」
「おぉそうだった。久方ぶりに見せてくれ、由緒ある王冠を」
「はい、すぐに持ってこさせます。おい、そこの、早く持ってこい」
持ち場を離れ、台座ごと王冠を持ってくる。
「ではでは、拝見させてもらいますか」
「おおう、これはなんと神々しい…ん」
「どれどれっと…おぃこれ本物か?」
「本物ですとも、よく見てください。これこそ代々伝わる王冠でございますとも」
「…偽物ね、これ」
「………は?何と言ったかこのババァ!…あ、いや、申し訳、ありません…」
「正真正銘これは偽物よ。あなたいつから……いやもう意味はないわ」
「いやいや、そんなことあるはずがありません!」
「ふぅむ、これはまず填める石が違うねぇ。近い色だが、全くの別物だ」
「裏返してみろよ、ここに猫のマークあるぞ」
「はぁ!?」
王冠を持ち上げて裏側を見る。
そこには確かに、猫さんマークが1つ。
ドサっと、力なくグンジは倒れる。
「あり、えない…」
「またか」
「そうね、一旦この男の継承は抹消。数日後の期日までに本物が発見されなければ、他の人物をあてがうしかないわね」
「確か、息子さんがいたような」
話が進んでいく中、グンジは金のことばかり考えていた。
これまでの実績は?
レーザーと装置を購入した意味は?
これからのゆとりある暮らしは?
「あり…」
「ん?」
「あり得ない!これは何かの陰謀だ!継承を抹消するだと?そんなことあってたまるか!ここは俺の街だ、それもこれも俺の金だ!」
「いい加減に…」
長の一人が手を掴む。
グンジはその手を払い除け、投げ飛ばし、蹴る。
「無礼だぞ!貴様いい加減にしろ!」
「うるさい!俺の、おれのものなんだ!」
数人がかりで、ようやく抑え込まれる。
最後まで怒号と罵声を響かせたグンジだったが、その愚かさには、さすがの従者も引いており、誰も助けには来なかった。
傷害罪などの理由により、捕縛。
彼の者はこの街から永久追放されることになった。
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