第19話 奪還②

ガードが硬くないことに驚きを隠せないでいる。

もしや罠なのではと逆に疑ってしまいそうだ。

意外にもフィロ達は、内定できたことを不思議には思ってはいない。

僕が可笑しいのだろうか。


ただ働けるといっても王冠の近くではなく、外周の掃除など誰にでもできる内容だ。

定例査定の前後一週間というだけの雇用。

ジモンさんには申し訳なく思うが、残りの一週間は休みにしてもらった。

特異体質のおかげで、鉱石を山程採掘できているというのも了承の理由だろう。




「そこっ、手を止めないで!ちゃんと掃除して!」

「はっはい!ただいま!」


採掘場のことを考えていると、叱られてしまった。

ピリピリしているのは、ここの上長だ。

僕の他にも数人叱責をくらっている。

雇用されたばかりの人達は多い。


人手不足のおかげで、敷地に侵入できたのは有り難い。

ただ、建物内には、ほとんど入ることができない。

隙を見ての位置把握は何度か実行した。

この2日間で、おおよその見当はついている。

というのも、あきらかに厳重そうな扉があるし、外から感じるエネルギーも、その場所を指しているため、間違いはないだろう。


あとは、決行日と時間帯。

やはりここは、夜が最適だろう。

人気も少なくなるし、フィロは夜目も効く。

問題が起きても闇夜に乗じれば、回避できる可能性は上がる。


それと決行日は、前日。

早すぎると隠す手間がかかる。

そもそもがまだ出来上がってない。

ジモンさんに見せてもらった写真だけで出来るのだろうか、こればかりはフィロ達に期待するしかない。





「おい、そこのお前」


挙動不審に思われたのか、振り返った先には、グンジさんがいた。

後ろにいるのは従者だろうか。


「見ない顔だな」

「あ、はい」

「使用人は多い方がいいとおっしゃったのはグンジ様でしょう」

「そうだったな。見栄がいいしな」


少しだけビックリした。

話を聞いたときに見せてもらった写真と、今間近にいるグンジさんは全く違う雰囲気だ。

穏やかさがまるでない。


「ではグンジ様、あまり時間もありませんので、そろそろ…」

「そうだったな。おいお前、ちゃんと働けよ、俺のために。この街で一番偉いのは俺様だからな」


人はここまで変わってしまうのか、少し怖いくらいだ。


「やっぱり、このままではいけないな」


誰の耳にも入らないよう、僕は呟いた。







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