第18話 奪還①

その日の夕食時は、森で見つけた珍しい食材が話題に挙がっていたが、内容は覚えていない。

イアンやユウには悪いことをした気分だ。


今も昼間の話をずっと考えている。

寝室で横になっているが、なかなか眠れない。


ノック音が聞こえ、寝た振りをきめ込む。

しかし意味はなかったようで、フィロとネムの2人が突入してきた。


「だいじょうぶ?」


「考え事をしてただけだから大丈夫。もう寝るよ」


電気を消す準備をしようとした時、フィロはあのワードを口にする。


「おうかんだっけ?」

「え?聞いてたのフィロ?」

「きこえた、私は、ほら」


両耳を器用に動かす。


「あーそうか、獣人は感覚が鋭いもんね」

「はやくもうごけるよ、ほらステップステップ」


フィロとネムは手を繋ぎ、狭い部屋で華麗にステップしていた。


獣人は軽快に動くことができる。

暗闇も見通せる。

頭の中で、少しずつピースが繋がる。


「あのさフィロ、ちょっといい?」

「うんいいよ、手伝ってあげる」


意外にも返事は早い。


「まだ僕何も…」

「見てたからわかる、私は今日ずっとリンを見てた」


それは恥ずかしい。


「女の子は、男の子のかんがえていることわかるんだよ」


一番下の言葉にしては達者だ。

見透かされていたとは、僕もまだまだだ。


「じゃあ、お願いするけど、まず侵入ってできると思う?」

「しんにゅう?」

「えっと、王冠のある建物に入ることができるかってこと」

「ああ!私、あそこ入ったことあるからだいじょうぶだよ」

「……ん?えっ?なんで?侵入したの?」

「おいしいものあるかとおもって…おっきいところには、なんでもあるはず、でしょ?」

「あーなるほど。そうだね、間違いない」


その時は捕まることもなければ成果もなかったようだ。

さすがに同じ経路が使えるとは思えないが、途中までの経路は問題なさそうだ。

もしバレたとしても撹乱はできるだろうし、フィロだけなら逃走は可能だ。

問題は僕。

何が一番安全な方法か考え込んでいると、ネムが袖を掴んでくる。


「そこで働いたらいいんじゃない?」


捻り出した答えを無下にすることはできない。

ここはベストな回答と褒めるべきだろう。

そうしたいのは山々ではあるが、普通に考えても無理がある。

時期が時期なのだ。

警戒を怠るはずがない。

他に良い案が出ないため、今日は寝ることにするが、明日は一応、念の為、万が一ということもありえるから、可能性を信じ、街に行ってみようと思う。





次の日、面接に合格して働ける事実に、驚愕していた。



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